ハンマーは別の教室からポケットに入れて持ち出した

犯行直後に警視庁が傷害の現行犯で逮捕したのは2023年3月末に留学ビザで入国した法政大社会学部社会政策学科の2年生、ユ・ジュヒョン容疑者(22)。事件は10日午後3時40分ごろ、社会学部が入る多摩キャンパス4号館での「日本経済論」の授業中に起きた。

「最初に後方の席にいた数人をハンマーで殴りつけたユ容疑者はそのまま前へ進み出ながらハンマーを投げつけ、さらに机の上にあった物を投げつけたり机をバンと叩いたりしました。大声を出すことはなかったようですが、大きな音や殴られた学生の悲鳴で異変に気付いた学生らはユ容疑者を避けて後方へ逃げたようです。

それからユ容疑者は一人で落ち着きを取り戻し、教室にいた教員に声をかけられると抵抗することもなく2人で教室を出ました。そこに駆け付けた警備員が身柄を確保した形なのですが、その時彼女は『こんにちは。大丈夫です。私は何もしていません』と素の表情で話していたといいます」(社会部記者)

ユ容疑者(共同通信社)
ユ容疑者(共同通信社)
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幸いなことに殴られた8人に重傷者はいなかったが、後頭部を殴られて出血するなどのけがを負い病院へ搬送された。

「警視庁の調べでは、授業開始時に前から3列目に座っていたユ容疑者は、10分ほどたって一番後ろへ行き、最後尾の席に並んでいた5人をいきなり後ろから頭をハンマーで殴っています。さらに周辺にいた3人を殴りつけ、前へ進んでいったようです。けがの程度は軽くて済みましたが、不意打ちで後頭部を狙われており、危険な状況でした。

凶器のハンマーは、『社会学部の別の教室にあったものを、朝、上着のポケットに入れて持ち出した』と供述しています。教室にそんなものが本当にあったのかどうか、捜査が進んでいます」(警視庁担当記者)

法政大学(撮影/集英社オンライン)
法政大学(撮影/集英社オンライン)

犯行直後の理解不能な言葉とともに疑問が膨らむのが動機だ。

「ユ容疑者は『日頃からいじめを受けて軽くみられていたと思っていた。私へのいじめをやめさせるには、同じ教室にいる人たちを殴るしかないと思い殴りました』と供述しています。

しかし8人のうち4人から警視庁が話を聞いたところ、うち男女2人の学生は面識があったものの、男性は少人数のクラスで自己紹介を交わし、女性の方は昨年から同じ講義をこれまで5回くらい一緒に受けたと答えています。ほかの2人は面識がないようです。いじめをやめさせるためと言いながら面識のない学生も襲った可能性があり、通り魔的な動機による犯行であることも捜査の視野に入っています。

今のところ心身に不調を抱えていたとの情報を警視庁は把握していませんが、彼女は数か月前にも他の学生を殴ったり、暴言を吐いたりしたとの証言があり、事実なら大学がその際にどう対処したのかも捜査の解明対象になるでしょう」(社会部記者)