罷免には9人の裁判官のうち6人以上の賛成が必要

「尹大統領が12月3日夜に突然発表した戒厳令は、約2時間半後の4日午前1時ごろ、国会に駆けつけた190人の国会議員の賛成で戒厳解除要求案が可決されたため、法的効力を失いました。

軍は国会に200人以上の陸軍の最精鋭部隊を投入し議決阻止を図りましたが、現場の将兵は、体を張って議事堂入りを阻止しようとした野党の議員秘書らを暴力的に排除することもなく、可決後は撤収しました」

尹錫悦(ユンソンニョル)大統領(本人SNSより)
尹錫悦(ユンソンニョル)大統領(本人SNSより)
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そう話す全国紙の国際部デスクは、「軍による権力奪取や民主化運動弾圧が繰り返された韓国では1987年の民主化を経て、軍が市民に銃を向けることは許されないという考えが軍の中にも浸透していました。権力の不当な行使は許さない社会の意識の反映でしょう」と、その背景を指摘する。

戒厳体制の確立に失敗した尹氏は猛烈な世論の非難を浴びる。

300議席の国会で192議席を占める野党は、200人の賛成で成立する大統領弾劾訴追案を国会に提出。一度は与党「国民の力」が団結して可決を防いだが、野党側が14日に試みた2回目の採決では世論にたじろいた与党から造反者が出て204人の賛成で弾劾訴追案は可決され、大統領権限は停止された。

国会議事堂内に侵入した戒厳軍部隊(韓国MBCより)
国会議事堂内に侵入した戒厳軍部隊(韓国MBCより)

国会前に押し寄せた数十万人の退陣要求集会の参加者は喜びを爆発させた。だが尹氏は終わったわけではない。

「憲法裁判所は180日以内に大統領を罷免するかどうかを決めます。罷免には9人の裁判官のうち6人以上の賛成が必要です。

ところが現在、憲法裁の裁判官は3人が欠員です。罷免には在籍判事全員が賛成しなければなりませんが、裁判長格の判事と他の一人は保守派です。国会が野党主導で3人の欠員を充足させても罷免になるかどうかは予断を許しません」(ソウル特派員)