子どもがいても「誰に頼ったらいいかわからない……」
結婚をして、子どももいる。LGBTQ当事者以外でも、家族がいるからといって、満たされているわけではないと語るたいこんさん。
「麻雀仲間の奥さんがいるんですが、ご主人も亡くなって、お子さんも独立したと。それで誰に頼ったらいいかわからない……、なんておっしゃっていたんですね。
家族がいるといっても、立場や関係性はいろいろですよね」
老後に思いを馳せたとき、認知症という課題は避けることができないだろう。
たいこんさんが認知症サポーター養成講座を始めるようになったのは、そもそも自身が、母親の認知症について学ぶために新宿区の講座を受講したことがきっかけだった。
「母の認知症を知ったとき、そのときはやはり絶望を感じました。
でも、学ぶことにより、どうして認知症になるのか、認知症の人はどんな景色が見えているのか、そして認知症の人に対しての接し方について深く知るうちに、対応方法はもちろん、人生に対して希望も生まれてきたんです」
「これは二丁目の仲間にも必要な内容だ!」と思い、職員に相談したところ、「手順を踏めば、認知症サポーター養成講座の講師になることもできますよ」と提案されたんだそう。
だが、実際に講師になるためには、東京都が主催する特定の講習を受講する必要があり、個人では受講資格がないという。それならば、と、たいこんさんはNPO法人の設立を決める。
これまで普通とされてきた家族という形態が、決して誰にとってもセーフティネットになっているわけではない。でも、人にはなにかしらのつながりが必要ではないか。
そう考えた彼は、NPO法人を作るにあたり、「いくつになっても、気兼ねなくのんびりつながれる場所を作ろう」と決める。
「コンセプトは、親兄弟ではなく、いとこやはとこくらいの関係でしょうか。誰もが避けられない老後を、適度な距離感で支え合えたら、と考えたんです」
NPO法人コラルトとは、「カラフル・オルタレゴ」の略称。「カラフル:色彩豊かな、色鮮やかな、生き生きした」+「オルタレゴ:分身、もうひとりの自分、無二の親友」で、多様性と多面性を表しているという。
NPO法人を作ったのであれば、それをうまく活用する方法はないかと模索していったと話すたいこんさん。
そのなかで知ったのが、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な人を法律的に支援する「成年後見制度」だった。
「なかでも『任意後見』は自分たちでも活用できるんじゃないかと思いました。実は親族などの個人だけでなく、法人でも任意後見人になれるんです。コラルトのようなNPO法人でもOKなんですね。
NPO法人をコアとして、後見人制度などと組み合わせることで、それぞれが3親等程度につながることができる。
法人後見人が一般的になったら、最期の日まで、もっと風通しがよくて、のんびりした関係が続けられるのかなと思います。
私が講師をしている認知症講座では、認知症やLGBTQ関連にまつわる最新の医学的情報、法的情報、行政サービスの情報などもお伝えするようにしています」