運命のままに生きてはならない

学海長官は老師の言葉に感銘を受けて、帰ってから奥さんにその話をします。奥さんもたいへん立派な方だったのでしょう。

「それはよいことをお聞きになりましたね。できれば私も一緒になって、これからはなるべくよいことを思い、よいことをしていくようにします。二人して力を合わせていきましょう」

奥さんがそう言ったあとで、この本は局面ががらりと変わります。

「なあ息子よ、お父さんはあの白髪の老人が言った通りの人生を歩いてきた。しかしご老師から、運命のままに生きてはならない、考え方によって人生は変わるのだということを教わり、お母さんと一緒によいことを思い、よいことを実行するようになった。すると、生まれてこないと言われていたおまえが生まれた。それだけではない。53歳で寿命が尽きると言われていた私が、70歳を過ぎた今も元気にしている。

人生というのはそういうものなのだよ。人生には運命があり、その運命を変える因果の法則というものがある。善きことを思えばよい結果が生まれ、悪いことを思えば悪い結果が生まれるという因果の法則があるのだよ」

そう息子に語っているのが『陰騭録』という本です。

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若い頃にその内容を理解した私は、「ああ、やっぱりそうなのか」と思いました。人生の方程式というものをつくり、考え方が大事なのだと思ってきたけれども、やはり人生の中で一番大事なのは「考え方」「思い」であったのかと、確認することができたわけです。

「どう思うのか」ということが、人生の中で一番大事なのです。

以来、私はそのことをいつも考えながら生きてきたつもりです。


(2006年12月22日 善通寺市立東中学校での講演より)

写真/shutterstock

「迷わない心」のつくり方
稲盛和夫
「迷わない心」のつくり方
2024/11/8
1,650円(税込)
208ページ
ISBN: 978-4763141712

世界累計2800万部。
稲盛和夫氏がこれからの時代を生きる人たちに伝える人生の目的とは



◎世界累計2800万部&京セラ稲盛和夫氏と、『君たちはどう生きるか』の羽賀翔一氏がコラボした最新刊!
初公開の講演録も含め、稲盛氏が若い人たちに向けて語った内容と、導入として羽賀先生の漫画を掲載。今迷いのあるすべての方に向け、やさしく語りかけるような1冊になりました。
◎「思い」がすべてをつくる
京セラ・KDDIの創設、JALの再建、著書累計が世界2800万部に及ぶすばらしい実績を残した稲盛氏ですが、10代の頃はうまくいかないことも多く、「自分は絶対くじに当たらない自信がある」とまで話していたそうです。
何が稲盛氏の運命を変えたのか。それはすべて「思う」ことから始まりました。では、人生を変える「思い」の持ち方とは何か。生き方が変わる1冊です。

【目次より】
第1話 能力以上に「運命」を決めるもの
第2話 感動のある人生を生きるために
第3話 試練をどう乗り越えるか
第4話 君の思いは必ず実現する

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