「日曜日まで投稿しないで下さい」

集会は日程の説明と諸注意から始まった。諸注意は会場正面の大型スクリーンに映し出された。「コミュニティーの合意」というタイトルがつけられ、全部で11項目だ。「他者の発言を妨げないようにしましょう」、「ジャーゴン(仲間内だけで通じる言葉)は避けましょう」、「携帯電話に夢中にならずに、今いるここに集中しましょう」などごく普通の注意事項が並ぶが、特徴的なものもある。

例えば、「いつも団結のことを忘れずに」という内容には、団結の重要性を強調した労働組合的な文化が感じられる。「他人の気持ち、バックグラウンド、文化の違いを認識し、敬意を払いましょう」と多様性の重視・尊重を確認した注意事項もある。

ちなみに、バックグラウンド(background)は、性別、人種、宗教、生い立ちなど、さまざまな要素を意味する言葉で、特に多民族国家のアメリカで生きていくためには避けられないキーワードだ。

例えば筆者は、「先祖の墓は日本の寺にあるが、信心深いわけではない」ということを説明したい時には、「私は特定の宗教の信者ではありませんが、バックグラウンドには仏教があります」などと説明していた。

ただ、諸注意の中で筆者が最も注目したのは、写真についてのものだった。「他人の写真を撮る時には事前に尋ねましょう。日曜日まで投稿しないで下さい」とある。日曜日に会議が終了するまで参加者の顔写真はソーシャルメディアに載せないでほしいというお願いだ。

若い世代にとってソーシャルメディアは諸刃の剣だ。

自分たちの活動をアピールできるツールとして強力である一方、その迅速性が仇となることもある。参加者が特定されて、その政治信条がソーシャルメディア上でつるし上げられるかもしれない。

写真はイメージです 写真/shutterstock
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写真の背景から集会の場所が特定され、対立する勢力のメンバー、彼らの場合は保守派の若者たちが大挙押し寄せてきて、集会の継続が困難になるかもしれない。

若者たちへの注意事項とは別に、筆者たち取材班が事前に確認を求められたことがあった。それは、集会のライブストリーミングはしないということだ。ユーチューバーに代表されるように、現代は、スマートフォンなど簡易なデバイスを使ってライブストリーミング、いわば生中継も当たり前の時代だ。今回の集会でそれをやられてしまったら、それこそ保守派の襲撃は避けられないだろう。

筆者たちが生中継はしないし、素材はすべてロサンゼルスに持ち帰るし、日本で放送されるまでにはしばらく時間があることを告げると、何も問題がないという反応が返ってきた。こんな些細なやりとりからも、アメリカの若者たちの分断がいかに深刻かが見えてくる。