移民の受け入れめぐる対立
民主党と共和党では、移民に対する考え方が大きく違っています。
民主党は、アメリカは移民によってできた国なのだから移民に寛容であるべきだ、というまさにリベラルな考えなのですが、一方の共和党は保守的で、正規の手続きにもとづく移民は認めるが、それ以外の不法移民は認めないという姿勢を示してきました。
しかしいずれにしても、多くの移民を受け入れ続けている国であることに変わりはありません。
アメリカの移民数は4500万人から4700万人で、そのうちの約1000万人は正規の手続きを踏んでいない不法移民だといわれています。その不法移民の多くは中南米からメキシコに入り、メキシコとの国境を越えてアメリカに入ります。中には国境沿いのリオグランデ川を泳いで渡る人もいます。
アメリカにはサンクチュアリ・シティ(聖域都市)と呼ばれる都市があります。ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルスなどがそうで、不法移民を保護する都市や自治体のことです。通常、不法移民が警察に捕まると、その時点で不法入国者の取り締まりを行う捜査機関である移民・税関執行局(ICE)に通報されて国外退去などになるのです。
ところが、サンクチュアリ・シティは移民・税関執行局への通報を拒否しています。もし万引きで捕まったとしても、万引きの罪だけ問われて、不法移民であることはどこにも知らされません。さらに不法移民に運転免許の取得を認めるなど、生活を支援しているのです。ですから、国境を越えた移民たちは、このサンクチュアリ・シティを目指すのです。
またアメリカでは、国内で生まれた子どもは自動的にアメリカ国籍を取得することができます。そうなると妊娠している女性がアメリカに入ってきて、そこで出産すれば子どもはアメリカ国籍になります。アメリカ人の子どもの母親や父親は永住権が得やすいので、アメリカで出産を望む移民も多くいるのです。
2017年1月、トランプ大統領は、サンクチュアリ・シティに対し連邦資金を交付せず、速やかに不法移民を拘束し国外退去させるように求める大統領令に署名しました。しかし、サンフランシスコをはじめとするサンクチュアリ・シティは訴訟を起こし、大統領令の一時停止が認められました。