注目はミシガン「約21万のアラブ系住民票」

長いアメリカの歴史のなかでも、類を見ない大激戦となっている今回の大統領選。両陣営は最後の最後まで、相手の支持基盤に手を突っ込んで票の掘り起こしに注力してきた。

「人口3.6億人のアメリカですが、有権者登録数は1.7億人ほど。投票率が60 %前後として、米大統領選はだいたい1億票前後をめぐる争いとなる。ただし、これだけ僅差の戦いとなっているため、焦点は激戦7州の態度未決定票約200 万票の動向に移っている。1億票のうちの200万票だから全体のわずか2%。このミクロな票数の動きによって激戦7州の勝敗が決まり、全米での勝敗が確定するという状況になっているのです」(小西氏、以下同)

「トランプ支持者はゴミ」ハリス陣営、激戦州の票取りに影を落とす「失言」と「ホワイトハウスの文書改ざん」_1

とくに激戦7州のひとつ、ミシガンでは州人口の2%、わずか20万8000人ほどのアラブ系住民票の動向が勝者を左右しかねないと、注目されている。

「もともと民主党支持が多かったアラブ系住民がパレスチナ自治区ガザへの攻撃を続けるイスラエルへの支援をやめないバイデン政権に失望し、ハリス離れが起きているんです。その一方で、『私が大統領になれば、すぐに停戦できる』と主張するトランプ氏への期待が高まっている。

支持率でハリス氏はトランプ氏に1ポイント先行しているだけの僅差なので、たとえ小さな票田だとしてもアラブ系住民の動向次第でトランプ氏がハリス氏を逆転する可能性は否定できません。

ただ、ハリス離れしたアラブ系住民票の多くは親イスラエル色の強いトランプ氏でなく、第三政党から出馬した他候補に流れると私は予測しています。

その場合でも、トランプが比較優位でミシガンの選挙人を取るかもしれない。とにかく開票してみるまでは結果はどちらに転ぶかわかりません。それほど両陣営の差は僅差ということなんです」

同じようなミクロな票田の奪い合いが、激戦7州で最大の選挙人19人を抱えるペンシルベニア州をめぐっても勃発している。ターゲットとなったのは州人口の8%を占めるプエルトリコ系住民の票だ。

「発端はマジソンスクエアガーデンでの集会で、トランプ応援に立ったコメディアン、トニー・ヒンチクリフ氏が『プエルトリコはゴミに浮かぶ島』と、プエルトリコ系住民を中傷するような差別発言をして物議をかもしたことでした。

すると、今度はバイデン大統領がトランプ陣営を批判するチャンスとばかりに、『プエルトリコ系住民は礼儀正しく高潔な人々だ。私が目にする唯一のゴミは彼(トランプ氏)の支持者たちだけだ』と、トランプ氏の支持者、すなわち有権者をゴミ呼ばわりしたと聞こえる発言をして大炎上したんです」