疎外感からの解放を求めて
4日間に及ぶイベント(※「ターニング・ポイント・USA」という保守派団体が主催する大会)に、なぜ若者たちは全米から集うのか。冬休みともなれば、帰省や旅行、友人とのパーティなどやりたいことはいくらでもあるだろう。
アリゾナ州か近隣の州に住んでいるのであればまだしも、遠方から来るのであれば、飛行機代もかかる。アメリカはすでに冬休みモードだから、この時期の航空券は高い。
宿泊代も必要だ。こちらも冬休みなど休暇の時期に入ればつり上がるのが常だ。新型コロナウイルス感染拡大でアメリカの物価は一気に高騰した。ホテル代も例外ではない。都市部では、1泊100ドルで泊まれる安全なホテルはない。
いわゆるポストコロナと言われるようになって以降、日本でもホテルの宿泊代は上昇傾向だが、状況はアメリカも同じだ。特にアメリカでは、経済活動あるいは社会活動の再始動が日本よりも早く、物価の高騰が始まるのも早かった印象だ。
筆者自身、出張に伴う経費について東京の本部とやりとりをしていて、最終的にはアメリカの状況を理解してもらったものの、金銭感覚について日米間のずれを感じることがしばしばだった。
さて、若者たちが集会に参加するには、時間を何日も使うことになるし、高い旅費も用意しなければならないが、こうしたハードルを乗り越えてでも参加したいという強い動機が彼らにはある。その1つが、学校での疎外感からの解放だ。
彼らは、家庭の教育と学校の教育の乖離を強く意識する中で、疎外感を強めている。ここに集う若者たちは、基本的に保守的な家庭で育っている。
中には、日曜日は家族で教会に行くというアメリカの伝統的なクリスチャンの家庭で育った若者もいるだろう。
これに対して、学校は、概して科学重視であり合理性重視なので、性格上プログレッシブ=進歩的であろうとする傾向があるだろう。プログレッシブなことの代表例は、最近で言えば、LGBTQという言葉に象徴される性的マイノリティーの人たちが持つアイデンティティへの関心の高まりだ。
こうしたプログレッシブな意識の高まりは、保守的なキリスト教の価値観とは一致しないことがしばしばある。ここに集う若者たちは、その違いの大きさに悩んでいるのだ。