議会を解散すれば冬のボーナスの支給対象に…
これほどの四面楚歌にも、なぜ斎藤知事は職に執着するのか。一部では「時期」を選んでいるのではないかとの憶測もある。
「地方自治法の規定を見ると、9月19日に不信任案が可決されれば10日以内に知事は失職か県議会解散をする必要があります。ぎりぎりの9月29日に議会を解散すれば、40日以内に投票を行なう規定のため投開票日は11月3日が有力になります。
その後、知事は30日以内に議会を招集しなければなりません。この期間を目いっぱい使えば、次の県議会は12月上旬からになります。招集の初日に知事は失職させられるでしょうが、知事が12月1日に在職していれば冬のボーナスの支給対象になるとみられています」(同前)
県関係者によれば、12月1日に在職していれば知事のボーナスは約239万円になる見込みだ。ただこれには別の見方もある。斎藤知事自身が当選直後の2021年10月、「身を切る改革」をうたった選挙公約に従い、自身の給与とボーナスは3割、退職金は5割の削減を実行に移しているためだ。
「お金のためかどうかは分からないですね。ボーナス狙いの延命なら給与・ボーナスカットの公約実現の成果を自分で踏みにじるようなことになりますから。でも、これまでいろいろ出ているタカリは、給与が減った分を取り返そうという考えがあってのことかもしれませんから、なんとも言えないです」(同前)
一方、県職員やOBを中心に懸念の声が出ているのが、県議会調査委員会(百条委)の行方に絡む問題だ。
今回の問題は県の元西播磨県民局長Aさん(60)が、斎藤知事のパワハラやタカリだけでなく、片山副知事ら牛タン倶楽部が絡む公金不正支出疑惑など7項目の問題を記した告発文書を3月12日に匿名で県議や県警、メディアに送ったことから始まった。
この内容を把握した斎藤知事は片山副知事らに告発者探しを指示。公益通報者保護法違反とみられる告発者の探索で特定されたAさんは報復の懲戒処分を受けた。
さらに探索過程でAさんの公用パソコンから抜き出した個人情報を、井ノ本知明前総務部長(8月に更迭)が県議らに見せて回ったとの証言がある。
県議会はAさんが告発した7項目の疑惑を調べる百条委を設置し、後にAさんに対する告発者つぶしの弾圧も調査項目に加えている。
だが、この百条委の場でも維新の増山誠県議がAさんの個人情報の公開を要求するなどし、Aさんは7月に「一死をもって抗議する」「百条委は最後までやり通してほしい」との遺書を残し自死している。(♯14)
県職員らは、県議会が解散されるとAさんの命と引き換えにつくられたこの百条委がいったん消滅することに危機感を募らせている。そして斎藤知事は、百条委消滅による疑惑解明作業の終結を狙っているのではないかとの見方もある。
「議会が解散されれば解散後の選挙で選ばれた次の県議会が再び百条委を設置して調査を引き継ぐことは可能で、当然やらなければいけません。しかしこれが本当に実現するのか。県議には百条委を、斎藤知事を追い込む手段としか考えていないと思える節がある人物もおり、次の議会で設置される保証はありません」(同前)