解散後に県議会は再び百条委を設置するのか? 

現在の百条委はこれまで斎藤知事を2回、片山副知事を1回、それぞれ証人尋問し、パワハラやタカリ、Aさん弾圧に絡む新事実がいくつか明らかになっている。だが、斎藤体制下での県中枢部の力関係の解明が極めて困難であることをうかがわせる場面もあった。

9月5日、百条委に証人として出席した原田剛治産業労働部長が、井ノ本前総務部長が持ち歩いていたとされるAさんの個人情報を、3月下旬には自分も聞いていた、と口にした。

人事ライン以外の原田部長がこうした情報を入手すること自体が、個人情報保護法などに違反する疑いが強い。百条委で、誰から聞いたのかと詰問された原田部長は「人事課長とか副課長がいる場で(聞いた)」と証言した。

ところがこの証言に人事課が猛反発して訂正を要求。結局、原田部長は翌6日に再び百条委で証言のやり直しを自ら求め「3月25日に片山副知事から聞いていた」「(この情報が)他の場でも話題になっていた」などと発言している。

証人の井ノ本前総務部長が欠席した5日の百条委(撮影/集英社オンライン)
証人の井ノ本前総務部長が欠席した5日の百条委(撮影/集英社オンライン)

この状況を県関係者が解説する。

「原田部長は人事課長と特定する前から『人事課の方から聞いた』と口にしていました。誰から聞いたか言えと問い詰められて人事課長の名を挙げ、次に片山元副知事を名指ししましたが明らかに不自然です。

原田部長の説明を信じる者はほとんどいません。原田部長は情報を聞いた相手を絶対に隠さなければならず、人事課長や片山元副知事のせいにしたのではないか、人事課は黙っていなかったが、片山氏はそれを“かぶった“のではないかという見方が大半です」

原田部長がかばったとすればそれは誰なのか。そして百条委では証人として出席を求められた井ノ本氏が「殺害予告を受けている」と主張して出席を拒むなど、他にも実態解明の障害となる事態が起きている。

Aさんの処分に至る決裁文書(撮影/集英社オンライン)
Aさんの処分に至る決裁文書(撮影/集英社オンライン)
すべての画像を見る

 Aさんの個人情報とされるものに絡んでは、維新の掘井健智衆院議員が9月2日に地元のJR加古川駅前で一般の有権者に「(Aさんの公用パソコンから)出てきたもん、何や思います?」と口にしながら言いふらしていたことも発覚した。(♯16)いまだにAさんの名誉は蹂躙され続けているといっていい。

Aさんが告発した7つの疑惑と、Aさんを死に追いやった個人情報の流布。これらの真相究明を阻む最も効果的な手段として、斎藤知事は議会解散による百条委の消滅を図っている可能性もある。

生前のAさんを知り、真相の解明を願う関係者は、不信任決議へと突き進む事態を緊張感の中で見守っている。

※「集英社オンライン」では、今回の記事に関連する情報を募集しています。下記のメールアドレスかXまで情報をお寄せください。
メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X
@shuon_news  

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班