意見が割れる運動会のありかた
そして、コロナ禍に突入した。Aさんの子が3年生のとき、運動会はなかった。4年生になって、「体育授業の発表」という名目で、学年ごとに区切って開かれることに。競技は、順位をつけない徒競争とダンスのみで、団体競技はなし。
「この形式が、とても快適だったんです。遮るもののない校庭で、観客も保護者だけ。子どもたちの近くで見ることができました。進行は早すぎるぐらいで、子どもたちも体調を崩すことなく終えられました」
5年生のときも同様に、学年ごとの開催だった。徒競走は順位をつけないので、以前ならリレー選手に選ばれたような足の早い子がモチベーションをなくしたのか、ふざけているのが見られた。
6年生になると、新型コロナがインフルエンザと同じ5類になったこともあり、規模を拡大して2学年ずつ行なうことになった。団体競技や、組体操の手つなぎも一部、復活した。さらに、許可証を持っていれば祖父母や地域の人も入れるようになった。
「その結果、親以外の人が最前列をとってしまい、見づらかった。運動会は、保護者が主役である子どもたちの姿を楽しく見られる場であってほしいと思います」
「弁当を作らなくていいから楽」「PTA種目がなくなり手間が減ってよかった」「うちの子は毎年、運動会シーズンになると練習の疲れから体調不良になっていたけど、それがなくなった」といった運動会縮小に“肯定派”の声はAさん以外にも複数聞こえてきた。
一方で、運動会の縮小に、反対の意見も多くあった。小・中・高生の母・Bさん(40代)は、にぎやかな運動会に戻してほしいと願う。
「足の早いい子にとっては、1位になって尊敬される徒競走やリレーがなくなり、つまらない。それに上の子は、コロナ禍前に応援団に参加して楽しそうだった。順位づけや応援合戦を復活させないのであれば、運動会を縮小しないエリアに引っ越したい」と、真剣だ。
都内公立小5年生の母・Cさん(30代)も、縮小された運動会に寂しさを感じている。
「娘が小学校1、2年生のときはコロナの影響で運動会が中止に。小3のときに初めて運動会を経験しました。コロナ禍以前、娘の学校ではお弁当を持参して一日がかりで運動会を行なっていたみたいですが、コロナ禍以降は半日開催になりました。
娘の学校は児童数が多くないので、半日で全学年一斉に行います。種目は徒競走、リレー、ダンス、組体操の4つだけです。お弁当も作らなくてもいいから楽ですけど、『私たちが子どもの頃の運動会に比べて活気がなくなったなぁ』となんだか寂しい気持ちになります。やっぱり、いろいろな競技を通して娘の成長を見たいじゃないですか」