最低賃金アップはまるでオフサイドトラップ

都内の大手飲食チェーン店で働く、20代の男子大学生は「扶養控除の問題があって…」と口を開く。

「僕はまわりの学生と比べてかなりアルバイトをしているほうで、1年間でみると扶養控除ギリギリの103万円ラインまでバイトをしています。月に換算すると、8~9万円ほどです。

そんな事情もあって、バイトのなかでも昇格していって店長からヘルプを頼まれることも多いのですが、そうすると月収10万円を超えてしまう月が何度かあって……。そこで昨年の年末近くには103万円ラインに調整するため、月に2、3日しかでていませんでした。

こんな状態のまま賃金がアップすると、来年は10月くらいからバイトの出勤日に制御をかけなきゃいけなくなりそうです。店長が103万円ラインに調整するように、シフトを頑張って組んでいるのを見ると、なんだが申し訳ない気持ちになります。

賃金をアップするならまず先に、103万円ラインを引き上げなければしょうがないと思います」(20代 大学生)

都内の「ドトールコーヒー」の求人 *記事に出てくる人物とは関係ありません
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同じ飲食店でパートタイマーとして働く40代の主婦も、同様の悩みを抱えていた。

「私ももちろん103万円ラインを意識してバイトをしています。しかしこれが意外と簡単に超えてしまって、週3日出ればもうギリギリなんですよ。でもアルバイトの求人ってだいたい、週3日以上の出勤が条件じゃないですか。もうちょっとわりのいいバイトで週3だと、簡単に配偶者控除から外れてしまいますよね。それって皆さんどうしてるんですかね。

10年くらい前まではこの103万円ラインを気にすることなんてなかったのですが、ここ数年はかなり意識していますよ。結局政治家の人たちって、そこら辺のさじ加減が何もわかってない、庶民の生活を理解していないんだと思うと腹が立ちますね」(40代 主婦)

確かに今回の最低賃金アップのニュースを受けて、SNSを見ると〈最低賃金は上がるのに103万円の壁は動かないの謎なんだよな。オフサイドトラップじゃないんだから〉〈上げるべきは最低賃金より扶養控除の上限だと思うんですよ〉〈働きたいのに働けない日本人が大勢いて、『働き手が足りないから外国人労働者を募りまーす!』ってバカかよ〉など辛辣な声があがっている。