百条委の調査に対して県は妨害工作

そしてこの要求通り、1週間後には合計5500円相当の赤ワインとぶどうジュース1本ずつが県庁の秘書課へ届けられたというのだ。

また「道の駅」の業者が斎藤知事や随行員に農産物の手土産を渡した際、随行員は「いつも知事が一人で持って帰る」と返事したのを見たとも記されている。

さらに、パワハラについては「職員に対するハラスメントは、県政に関する重要事項とか施策遂行上の問題といった次元ではなく『知らなかった』『気に入らない』『配慮が足りない』『生意気だ』『自分より目立った』といった知事個人にとっての不都合、不満が原因となった叱責、罵倒である」と指摘。

「聞いていない」とキレ散らかしたり机をたたいて怒ったり、タメ口で職員を罵倒したりしたほか、県幹部職員間のグループチャットに気に入らない職員へのダメ出しを公然と書き込んでいたとも書かれていた。

19日の兵庫県議会百条委でAさんに黙祷を捧げる県議ら(撮影/集英社オンライン)
19日の兵庫県議会百条委でAさんに黙祷を捧げる県議ら(撮影/集英社オンライン)

補助金をてこにした寄付やパー券購入の強要疑惑などは、ネタ元を守ろうとしたのか具体的な情報の入手経路は明かしていないが、「大きな話題になっていました」と書くなど、県庁内で公然の秘密として語られていることを強調している。

百条委はこの陳述書も材料に、今後疑惑の情報提供を呼び掛ける意味もあるアンケートを県職員に行うことを決定。さらに証人尋問も順次行っていくことを決めた。

一方、県関係者によると、県は百条委による真相究明の妨害工作ともとれる動きを見せている。

「公務員は百条委の証人となって職務上知り得た秘密を証言する場合には『守秘義務免除』の手続きを取る必要が一般にあります。これは通常、『百条委で何を聞かれるかわからないが、聞かれたことに答える内容はすべて守秘義務を免除しますよ』という形をとります。

ところが兵庫県の人事当局は、事前に何を話すか、すべて事前に申請して承認を受け、話す内容は最小限にせよとの指示文書を作り、7月12日には幹部会を開いて周知徹底するよう締めつけています。どの職員が何を話すつもりなのか把握し、承認を受けなければならないとする、委員会への出頭妨害です」(県関係者)

兵庫県当局が作成した、百条委の証人になる職員への注意文書。末尾に証言内容の承認を事前に取ることを求める内容がある(撮影/集英社オンライン)
兵庫県当局が作成した、百条委の証人になる職員への注意文書。末尾に証言内容の承認を事前に取ることを求める内容がある(撮影/集英社オンライン)
すべての画像を見る

県のこの動きは19日の百条委でも取り上げられ、委員からは「調査妨害だ」として県当局を批判する声が次々と上がった。ある県議は「秘密が守られるなら百条委で言いたいことは山ほどあるという県職員はいっぱいいる」と口にした。

県職員の口を塞ごうとする県当局と真相究明を求める百条委の攻防がこれから本格化する。

※「集英社オンライン」では、今回の騒動について、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。
メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(Twitter)
@shuon_news  

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班