ラーメン最大の敵であるフードデリバリーが急拡大

ジェトロによると、2023年の中国外食市場規模は5兆元(105兆円)。2019年の水準を上回り、初めて5兆元の大台を超えた。

2013年のやや古いデータだが、ジェトロは中国の消費者に好きな日本食を尋ねており、ラーメンは6.5%で、寿司(8.8%)、刺身(6.6%)に次いで割合が高かった(「日本食品に対する海外消費者意識アンケート調査」)。
 

現地で圧倒的に人気があるのは豚骨ラーメンだ。その味を広めるのに寄与したのが、熊本県発祥の「味千ラーメン」である。うどんからの撤退を決めたトリドールは、「ラー麺ずんどう屋」で市場開拓が進んだ豚骨ラーメンのシェア拡大を狙っているのだ。

ラー麺ずんどう屋 新宿歌舞伎町店
ラー麺ずんどう屋 新宿歌舞伎町店

しかし、かつて中国で行列のできる店として知られた「味千ラーメン」も失速気味だ。香港市場に上場する味千控股有限公司は、2023年に黒字転換したものの売上高は18.2億元。コロナ禍を迎える前の2018年は24億元近い売上があった。需要が回復しきっていないのだ。

今、中国のラーメン店は逆風下にある。その理由はフードデリバリーの台頭である。

中国のシンクタンク・艾媒諮詢は国内のフードデリバリー市場が32兆円となり、2020年比で2.3倍に増えたとの調査結果を出している。ラーメンは配達中に麺が伸びてしまい、美味しさが失われるなどのイメージが強い。外食市場の1/3ほどがフードデリバリーに代わり、ラーメンが忌避されているのであれば、「味千ラーメン」の売上が回復しない理由もわかる。

さらに景気の悪化も深刻だ。かつて中国は中間層のプチ贅沢が流行していたが、現在は手軽なファーストフードにシフトしている。

この消費動向の変化に取り残されたのが、スターバックスだ。2023年、手軽なコーヒーを販売する中国のラッキンコーヒーに1.2倍の売上差をつけられた。2021年の売上高は、スターバックスの半分にも及ばなかった会社だ。

「ラー麺ずんどう屋」の主力メニューである「味玉らーめん」は920円ほど。中国のファーストフードの相場は400~500円だ。

また、たとえヒット業態に育っても、模倣店問題が根深いのも厄介。日本の「一蘭」にロゴや店舗のファサード、提供方法、メニュー構成までそっくりな店舗が中国にあったことは有名である。