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ラーメン業界の優等生が満を持して上場

総務省統計局によると、ラーメン店の市場規模はおよそ6000億円。この市場は寡占化が進んでいないことが最大の特徴で、横浜家系ラーメン「町田商店」を運営する株式会社ギフトホールディングスは最大手でもシェアは5.7%程度だと分析する。特に売上高100億円から300億円前後の中堅ラーメン店運営会社は、ターゲットや戦略がひと味もふた味も異なり、興味深い戦いを繰り広げている。

撮影/集英社オンライン編集部
撮影/集英社オンライン編集部
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上場している伸び盛りの中堅ラーメン店運営会社には、「魁力屋」と町田商店などを運営するギフトホールディングスのほか、ラーメン「山岡家」の株式会社丸千代山岡家、ラーメン「 一風堂」の株式会社力の源ホールディングスがある。

魁力屋の2022年12月期の売上高は88億1500万円だった。4社の中では最も売上規模が小さい。ただし、魁力屋のように直営店が主体のラーメン店の場合、出店を重ねることによって規模拡大を図りやすいという特徴がある。飲食店は過剰出店でカニバリズムを起こすと致命的なダメージを受ける。かつての「いきなり!ステーキ」がそうだった。

魁力屋は成長余地があると見るべきだろう。

※各社決算短信より(筆者作成)
※各社決算短信より(筆者作成)

ファミリー層に向けた「魁力屋」の狙い

ロードサイドとイオンモールなどのフードコートに130店舗出店し、看板メニューは「背脂醤油ラーメン」。京都ラーメンとも呼ばれており、家系や二郎系のようなクセが少ない。コクがありつつ、飽きのこない醤油ラーメンを提供している。

そのため、ターゲットはファミリー層が中心になる。魁力屋は子供向けのメニューや定食メニューを充実させることで、顧客満足度を上げている。4社の中では山岡家がキッズメニューを設けているが、定食には力を入れていない。

ロードサイドやフードコートに出店しているのも、ターゲットとなるファミリー層を意識してのことだ。熱心なファンを獲得するのではなく、ファミリーという母数の多い層に狙いを定めた。魁力屋は他社だと「幸楽苑」に近い戦略をとっている。

魁力屋の社長である藤田宗氏は上場前に日本経済新聞のインタビューに応じ、上場の狙いについて、「衛生や労務管理がルーズだと思われている業界において、社員が胸を張れる会社にしたい」と回答している。

これは、顧客であるファミリー層に対して、クリーンなイメージを持たせたいという意図もあるだろう。飲食企業にとって上場は、ブランドイメージを高める手段の1つだからだ。

バランス感覚に優れた経営で優等生的な魁力屋がどこまでシェアを伸ばせるのか。上場後の楽しみな注目ポイントだ。