アメリカの顔色をうかがう日本政府の悲哀

ある媒体からインタビューのオファーがあった。岸田文雄政権の新年度予算成立を受けて、「なぜ岸田政権はこれほど性急に防衛予算の拡大に進むのか」について訊かれたので、次のように答えた。

《今回の防衛費増額の背景にあるのは岸田政権の支持基盤の弱さだと思う。

彼にとって喫緊の課題は二つだけである。一つは国内の自民党の鉄板の支持層の期待を裏切らないこと。一つはアメリカに徹底的に追随すること。日本の将来についての自前のビジョンは彼にはない。

今回の防衛予算や防衛費をGDP比2%に積み上げるのも、アメリカが北大西洋条約機構(NATO)に求める水準に足並みをそろえるためであって、日本の発意ではない。日本が自国の安全保障戦略について熟慮して、必要経費を積算した結果、「この数字しかない」と言ってでてきた数字ではない。

アメリカから言われた数字をそのまま腹話術の人形のように繰り返しているだけである。

国民がこの大きな増額にそれほど違和感を覚えないで、ぼんやり傍観しているのは、安全保障戦略について考えるのは日本人の仕事ではないと思っているからである。

安全保障戦略はアメリカが起案する。日本政府はそれを弱々しく押し戻すか、丸呑みする。戦後80年、それしかしてこなかった。

その点では日本政府の態度は戦後80年一貫しており、岸田政権は別に安全保障政策の「大転換」をしたわけではない。政権によってアメリカの要求に従うときの「おもねりかた」の度合いが多少違うだけであり、そこにはアナログ的な変化しかない。だから、国民は誰も驚かないのである》

インボイス、マイナンバーに対して、ろくにストやデモもしない日本人の末路…米国のいいなりの日本政府、政府のいいなりの国民_1
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岸田首相の党内の政権基盤は決して堅牢なものではない。だから、長期政権をめざすなら、アメリカからの「承認」がその政治権力の生命線となる。

ホワイトハウスから「アメリカにとって都合のよい統治者」とみなされれば政権の安定が保証されるし、少しでも「アメリカに盾突く」そぶりを示せば、たちまち「次」に取って替わられ、政権は短命に終わる。