車で聞いていたラジオからフェス開催を思いつく
もし自分の好きな音楽のアーティストだけを集めて、大規模なライブやコンサートを開けたなら。
会話レベルでも十分楽しそうな妄想だけど、もしそんな夢のようなことを自らの私財を投げ打って本当に実現してしまったら? それはとてつもなくクレイジーで、とんでもなく素敵なことだ。
そのクレイジーな男の名は、スティーヴ・ウォズニアック。
世界中の誰もが知っているApple社の設立メンバーであり(社員番号1番)、1977年のスタート当初から故スティーヴ・ジョブズ(社員番号2番)のよき相棒として、同社の知的良心を担ったエンジニア。
技術力の高さと温厚でユーモア溢れる性格から、有名なお伽噺にちなんで「ウォズの魔法使い」と呼ばれる。
始まりは1981年。前年のApple社の株式公開で1億ドル以上(当時のレートで約200億円以上)にも及ぶ莫大な資産を得ていた30歳のウォズニアック(以下ウォズ)は、車の中でよく聴いていたラジオ局のカントリー音楽がきっかけで、大規模なコンサート開催を企てることを思いつく。
「巨大なパーティにしたかった。みんなで楽しむために……名もない場所で最高のコンサートをやりたくなって」
しかし、エンターテインメントや興行のノウハウを持たないウォズは、「どうやって進めるか最低限のことさえまったく分からなかった」ので、まずはコネのある仲間に相談することにした。
それはピート・エリスをはじめとした協力者の賛同を得ながら、「何が何でも実現させる」という情熱へと変わっていく。このアイデアを気に入ってくれた結婚したばかりの妻には「お金も儲かるから」とつけくわえた。