綿密な議論なく、急いで可決させた

まず共同親権について安藤氏はどのように考えているのだろうか。

「共同親権はとても難しいトピックです。これが施行されると、パートナーのDVや虐待などによって離婚した場合でも、元パートナーとの面会交流を拒否できなくなります。子どもを危険にさらす可能性があり、身体的被害はなくてもかなりの精神的負担を子どもに与えかねない。その一方で、現行の単独親権では、一方的に離婚を迫って元パートナーに子どもを会わせない“連れ去り”が許容され、その被害を訴えている人も少なくありません」

写真/shutterstock
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こうした共同親権、単独親権、それぞれで起きる問題点を指摘したうえで、今回の衆院本会議は具体的な内容について十分な議論がされないまま可決されたことに違和感を示す。

「一応、父母の協議によって共同親権か単独親権かを決められることになっていますが、DVや虐待があった場合、冷静な協議ができるはずがありません。また、協議の折り合いがつかないときは家庭裁判所が共同親権か単独親権かを判断するそうですが、その判断基準も綿密に議論されていません。与野党で時間をかけて話し合う必要があるにもかかわらず、かなり急いで衆院本会議を可決させた印象です」

与野党が議論できない背景

今回の共同親権のケース同様、インボイス制度も約54万筆のオンライン署名を集めるなど多くの批判が寄せられたが、昨年10月に施行。共同親権、インボイス制度ともに野党は批判的な姿勢を見せており、もう少し議論を交わしてもよかったように思うが、与党は強硬姿勢を一貫していた。

そもそも、なぜ与野党でじっくり議論されないのか。その理由として、安藤氏は小選挙区制の弊害を指摘する。

「本来、法案とは与野党が議論しながらよりよいものに作り上げていかなければいけない。しかし、小選挙区制が導入されて以降、各選挙区の議席を与野党で争うことにより、与野党の対立構造が顕著になりました。仮に野党の提案・反論に妥当性があったとしても、その提案を聞き入れてしまうと野党に手柄を与えることになる。それだと選挙で不利になってしまうため、野党の意見は一切聞き入れずに強引に進めるようになりました。共同親権にしても、インボイス制度にしても、与党の動きはある意味“いつも通り”です」