銀メダルを手にしてこみあげた“コレジャナイ”感

「最終目的地はリオでの金と決めたので、まず日本代表にならないといけない。それには記録を突破しないといけない。そのためにトレーニングをして、記録会でいい成績を残さないといけない、というように、一つずつ段階を決めてクリアしていく。ある種ゲーム感覚でやってました」

そのすべてをクリアしわずか4年でリオパラリンピックに出場。結果は400m、1500mで2つの銀メダルという快挙だ。「家族も周りもすごく喜んでくれた。でも僕の中には“コレじゃない”っていう感じはすごくあった。だからそこから、東京で金メダルを獲得するためのストーリーを組み立てました。」

有言実行へ。リオの銀メダルから東京へのプラン

「2017年の世界選手権で(リオで負けた)マーティンに勝って土をつける、2018年世界記録を更新する、2019年の世界選手権で勝つ…と計画を立てました」。実際に2017年と2019年の世界選手権で優勝、2018年に世界新記録を出し、2021年、東京でついに2つの金メダルを獲得した。有言実行モンスターの面目躍如だが当人は涼しい顔だ。「金メダルを獲るって決めて競技スタートしたんで。そのための練習は必要なことだから苦にはならないし、ちゃんとやると決めてやりました。昔から決めたことはわりと集中できて没頭できるんです」

「初めまして、パラリンピックで金メダルを獲る佐藤です」リオ、東京を経て、パラ陸上の有言実行モンスターがパリで目指すもの_3
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パラリンピックを知ってもらいたい。次なる目標を胸にパリへ

金メダルへの階段を上る過程で、株式会社モリサワと契約しプロに転向した。「理由はコロナ禍が一番デカかったですね。東京大会開催の是非で揺れていた時、なかなか選手の思いを表に出すことができなかった。でも、コロナ禍の制約でみんなが不自由な思いをしてる状況っていうのは、障害を負った僕らが普段感じてることと同じだよ、という思いがありました。それを自分の責任で発信したかった。SNSを積極的に使っているのも、パラリンピックを知ってもらいたいから。オリンピックが人類最強を決める祭典なら、パラリンピックは、人間の残された機能を最大限に発揮してどこまでできるかを追い求めた先の祭典なわけですよね。パラの選手たちがそれに挑戦していることを伝えたいなって」

「東京で世界新記録を更新できなかったので、それをパリへのモチベーションにしてましたが、昨年、ベルギーの新星、マキシム・カラバンに負けたことで変わりました。彼は元々ハンドボール選手でバリバリのプロだったんです。そんな超トップアスリートを、何の競技経験もなかった僕が“ブチ倒す”。パリで彼の世界記録を塗り替えて金メダルを獲り『悔しいだろう』って英語で伝える(笑)。それが今の最大のモチベーションです。」

明確な目標を達成し続ける有言実行モンスター、パリではどんな“風”をつかむのだろうか。

撮影/越智貴雄

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