社員3人しか知らなかった極秘デビュー

2020年「ラジオNIKKEI」に入社した藤原菜々花アナウンサーは、入社5年目を前にして競馬実況デビューを告げられる。しかし担当を任されたのは、そのわずか2日後のレースだった。

当時の心境をこう振り返る。

「入社以降、競馬をほぼ知らない状況から実況の練習を続けてきたので、上司から呼び出されたときは『いよいよ来たか』という気持ちでした。

実際に、競馬実況デビューが決まったときは、ゴーサインを出していただいてうれしいという気持ちでしたが、担当するレースが2日後だと告げられたときはびっくりしました。ある程度心構えができていたのですが、『明後日にいきなり!?』という気持ちで、告げられた瞬間から鼓動が速くなるのを感じていました」

JRAとしては史上初となる、女性競馬実況を担当した藤原アナ
JRAとしては史上初となる、女性競馬実況を担当した藤原アナ
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しかも藤原が競馬実況を担当することは、ラジオNIKKEI社内でも3人しか知らされていなかったという。藤原の上司いわく、事前に女性アナウンサーの競馬実況デビューが公になると、レース前に取材対応が入って集中できなかったり、藤原本人にもプレッシャーがかかってしまったりする。そうした配慮からの極秘デビューとなった。

Xには500件以上のDMやコメント

「実況デビューが告げられたとき、私自身としては、いよいよ憧れの実況ができるというワクワクした気持ちでした。その時点で、女性としてのJRA競馬実況デビューは史上初だと知っていましたが、自分が女性だからという意識は特にしないようにしてました。

入社した段階で上司からも、たまたま私が入社したタイミングで、競馬実況アナウンサーを求めていたからだと聞いていたので、他の男性の先輩と同じようにやろうと、変に気負わないよう意識していました」

「女性ということは意識せずに臨みました!」
「女性ということは意識せずに臨みました!」

そしてデビュー戦の3月3日が訪れる。レース前のファナンファーレが鳴った直後、藤原アナの出番が回ってきた。

「中山競馬場3レースは、3歳の未勝利戦です~」

聞き慣れない高く澄み切った声が、晴天の中山競馬場に響いた。史上初となる女性のJRA競馬実況アナウンサーが誕生した瞬間だ。藤原と同じ部署の上司も、アナウンスが流れて初めてその起用を知り、ざわめいたという。

そんなサプライズも束の間、レースはものの2分弱で終わり、藤原はデビュー戦を無事に終えた。藤原のXのアカウントには、祝福やねぎらいの声など500件以上のDMやコメントが殺到。さらにXのトレンドで1位にも入るほど反響は大きかった。