直面する男性と女性の声の違い
藤原は3月3日以降も、コンスタントに競馬実況を担当し、4月15日時点で10近いレースを経験した。そのなかで、緊張から発声を大きくすると怒鳴ったように聞こえたり、逆にトーンが落ち着きすぎると暗い印象を与えたりしてしまうといった反省をもとに、毎回微調整を続けている。
特に現在は、女性の声をどう活かしていくかを模索しているそうだ。
「男性は声が低いので、実況に迫力や凄みが乗っかりやすいんです。レース山場の『ゴールイン!』という声も、男性が情熱的に言うと臨場感がある。ただ、私がそれを真似しようとすると、キンキンした金切り声のように聞こえてしまうのがもどかしいですね。どうしたら女性の声でも迫力が出るのかを試行錯誤しているところです。
一方で、女性の声は、軽快さを感じられるのが強みだと思います。馬がパカパカと走っているような爽快感や、スムーズに聞けるような軽やかさを武器にしていきたい。男性とはまた違ったよさを見つけていきたいですね。ゆくゆくは牝馬のGIレースを担当してみたいですね」
いずれ競馬実況で、女性の声を聞くのも当たり前の光景になっていくかもしれない。
取材・文/佐藤 隼秀 写真/岡村智明