8年間一緒に住んでいた謎の女性…

実はこの寮、部屋の中で心中や自殺もあったと言われている、いわく付きの建物だったのだ。忍者タカさんの住んでいた部屋では、嘘か本当か、女中さんが首を吊って自殺した部屋だと、寮に住む先輩から聞かされたこともあったという。

近所に住む子どもたちからも「幽霊屋敷」と呼ばれていた。

「私は霊感がないんで、ほとんど気にもせず住んでいたんですが、霊感のある単身赴任中の社員の奥さんが遊びに来たときは、あまりの霊圧に寮に入れなかったこともありましたね。

まあ、そんな感じで過ごしてたんですが、確か年始の仕事始めのとき、初めて隣の家にお邪魔することがありました。
毎年、社員寮の隣の家ということで、上司が年始の挨拶に行っていたんですが、その年は私も初めて一緒に行きました。玄関先での挨拶だったんですが、玄関は吹き抜けになっていて、吹き抜けの2階部分に窓。『なるほど、位置的にあの窓が自分の部屋と隣り合ってるのか』と、このときわかりました。
しばらくして、また暑い夏がきたんですが、部屋の中でテレビを見つつ、ふと開けっ放しの窓を見ていたんですが、一気に背中がゾッとしました。

『吹き抜けの上の窓なのに、なんで窓の向こうを奥さんが歩いていたんだ?』

吹き抜けだから当然、窓の下に廊下なんてありません。人なんか歩けるわけないんです。というか、窓越しに見えていたあの女性……勝手に隣の家の奥さんだと思ってましたが、そもそも奥さんとは面識もなく、ただ女性が歩いていたから奥さんだと思っていただけ。あれは、誰だったんだ? それに気づいた瞬間、恐ろしくなって暑さも忘れて窓を閉めました」

それからしばらくして、タカさんは寮を出ることにした。が、しばらくして再びこの寮を通りがかったとき、タカさんをさらなる恐怖が襲った。

「よく、寮の前では隣の家の子どもが道路にチョークで絵を書いて遊んでいたりして、私もよく、『あ! お兄ちゃんだ!』と、いきなりカンチョウされたり、『幽霊屋敷に住んでるけど、お金ないの?』と遊ばれて(虐められて)いたんです(笑)。寮を出てからしばらくして、この子と道路で会ったときに『お兄ちゃん! もうここに住んでないの? 窓から見てもいないんだもん』と言われました。

どうやら子ども部屋から私の部屋が見えていたようで、よく私の部屋を見ていたようです。『そうだよ、もう引越したんだよ』と言うと、『女の人も一緒に引越したの?』と言われ…。『え? 女の人? 女の人なんていないよ』『お兄ちゃんの部屋、女の人も一緒にいたよ!一緒に住んでたんだよね!』。

寮は、男性独身寮。私の部屋には女の人がいたことは一度もありません。どうやら私は、この世のものではない者と住んでいたようです。その1年後。この寮は火災で2階部分が全焼しました」

全焼した2階部分(忍者タカさん提供)
全焼した2階部分(忍者タカさん提供)

タカさんが社員寮から引越した1年後、隣のスナックが入ってる長屋が夜中に火事になり、火が社員寮に燃え移って2階部分が全焼した。連絡を受けて慌てて駆けつけると、逃げ出した社員の一人は「あははは、燃えてる! むっちゃ燃えてる!」となぜか爆笑していたそうだ。

部屋が燃えたことで、住んでいた“女性”はどこへ行ってしまったのだろうか…。いずれにしても社員寮が完備された会社に就職する場合、その家屋の状況はしっかり把握しておきたいものだ。

取材・文/集英社オンライン編集部