40年住んだ部屋から退去したおじいさんの行方

3月29日、かなり年季が入った部屋の写真とともに、〈40年住んでたおじいさんが退去しました。〉という短い言葉がX上に投稿された。このポストは瞬く間に拡散。多くの人の胸を締めつけたようだ。

写真に写った部屋の中にはもの一つないが、使い込まれたその様子から、人が長年住んでいた形跡はある。すでに荷物をすべて運び出し、部屋主は退去していったようだ。

床一面に敷かれた畳には大きなシミがついており、色もだいぶ変色している。畳だけではなく、壁も窓ガラスも、なにもかも色あせているが、窓から差し込む光に照らされるその部屋は、どこか趣があり、長い歴史を感じさせる。

このポストは2000万以上のインプレッションを集めるなどSNS上で大反響を呼び、Xユーザーたちから〈このポストだけで、ひとつの映画を観たような気分になる〉〈何とも言えない風情というか哀愁というか、エモい気持ちにさせられます〉〈この部屋から日本の40年を一人で見続けてきたんだなと思うと、なんかグッとくる〉など、部屋の画像にストーリー性を感じる声があがった。

しかしその一方で、〈なんだろうこの事故物件感…〉〈どちらに退去なさったのか気になる…〉〈おじいさんが退去した理由はなんだろな〉〈退去ではなく逝去では…〉など、おじいさんのその後を心配する声も相次いだ。

おじいさんが40年間住んでいた部屋(写真提供/X@tetukuruixi・テツクルさん)
おじいさんが40年間住んでいた部屋(写真提供/X@tetukuruixi・テツクルさん)
すべての画像を見る

おじいさんのその後について、このポストの投稿主・テツクルさんに直接お話をうかがった。

「逝去とか畳にシミが、とか縁起でもないコメントたくさんいただきましたが、 アパートの老朽化に伴う立退きで、おじいさんは私が用意したオートロック付ワンルームマンションに転居しました。無駄にエレベーターで昇降を繰り返したりして楽しんでるようです。部屋の風呂は狭いとのことで、銭湯通いは続けるそうです。
40年前というと昭和のバブルが始まった頃ですかね。アパートの大家さんも代替りして、おじいさんは誰よりも街の変化に詳しかったです。 転居先もアパートから徒歩で2分。住環境はかなり改善されたので、いつまでも長生きしてほしいです」(テツクルさん)

おじいさんは今も元気で、新しい部屋で不自由なく過ごしてるようだ。40年間住み続けた家から引越しをするのはかなりのストレスにもなるとも思われたが、楽しそうでなによりである。

ところで、賃貸住宅の平均居住期間がどのくらいかはご存じだろうか。

解体作業中の建物(写真提供/X@tetukuruixi・テツクルさん)
解体作業中の建物(写真提供/X@tetukuruixi・テツクルさん)