印象的なイントロは筒美京平によるもの

――いきなり私事になってしまい恐縮なのですが、実は20年近く前に長岡さんからディレクションのイロハを教わった経験があるんです。

あら! そうなんですね!

――そのときに、何よりも音楽への愛に溢れている方だなという印象を強く受けました。

うんうん、本当にそうですね。私も人生の半分以上、それこそ何十年も表現に関わりながら生きてきましたけど、カッコつけてみたり、反対にハングリーになりすぎてみたりしても、最終的に一番大事なのは、純粋に伝えたいと思う何かがあるかどうかだと思うんです。そこで嘘をついてしまうと決して続かない。

だから私にとって、「この人らしいやり方で表現の道を開いてあげたい」と思ってくれる方々が側にいてくださったというのは、とてもラッキーだったと思います。

デビュー当時はその作家陣の豪華さも話題になった
デビュー当時はその作家陣の豪華さも話題になった

――そういう意味では、作曲の筒美京平さん、編曲の武部聡志さんの力もとても大きかったわけですよね。

もちろんです。そうそう、今から数年前、ちょうどデビュー35周年コンサートの準備をしているとき、「卒業」のあのアレンジについて驚かされることがあったんですよ。

デビュー当時、初めて武部さん編曲のオケを聴いたとき、イントロのアルペジオがとても素敵で、スゴい編曲だなあと思ったんです。以来、あれは武部さんの考えたフレーズだと思い込んでいたんですけど、長岡さんが当時のテープを整理してくれて、元の筒美さんのデモ音源を聴いてみたら、なんとあのフレーズが最初から入っていることに気づいて…全然知らなかったので、驚きました。

やっぱり筒美京平さんという人はスゴかったんだなと改めて思わされましたね。その上で、そのフレーズを特徴的なシンセサイザーの音にして、ああいう風に活かした武部さんもさすがだなあ……って。

この時期の空気の中、学校の廊下を歩いていくような感じというか……。校舎で繰り広げられる物語のイメージがパーッと開いていくような曲、アレンジですよね。

取材・文/柴崎祐二