プーチンはテロの政治利用を画策?
米国家安全保障会議の報道官は事件発生直後、米政府が今月上旬、モスクワでISがテロを計画し「コンサートを含む大規模集会が標的になる可能性がある」との情報をロシアに伝えていたと明らかにした。
米政府はロシア在住の米国人に注意を呼び掛けており、米CNNは米軍の元高官が「複数の西側諸国が日時や場所を具体的に示し、テロの可能性をロシアに警告していた」と話しているとも報道。
重大な脅威とみるISを注視している米国は、諜報活動で具体的な情報をつかんでいた可能性がある。
「ところがロシア当局は犯行を防ぐどころか、現場から4人の実行犯の逃走を許しています。プーチン大統領が犯行を非難するビデオ演説が放映されたのは事件発生から19時間も後。あまりの遅さに『テロ情報を聞いていたのに防げず、恥じているからだ』との見方も出ました。ただ、そんな単純な話でもないでしょう」(外報部記者)
プーチン氏は演説で「国際テロという共通の敵と戦うすべての国々と協力する用意がある」と表明したが、実行犯の身元にはほとんど言及せず、実行犯らがウクライナに越境するルートが用意されていたと主張。
ロシア内務省などはタジキスタン籍の実行犯4人を逮捕し、ほかに関与した疑いで7人を拘束したと発表している。
「ロシアでは、独立を目指すチェチェンの武装勢力などによる大型テロが繰り返されています。2004年には北オセチア共和国の学校で子どもたち1100人以上が人質にされ、治安部隊の突入で約330人が死亡する惨劇も起きています。
しかし体制はテロ発生をむしろ国内の結束固めに利用してきました。1999年にモスクワで起きた、200人以上が犠牲になった連続爆弾テロは、チェチェン侵攻を正当化するための政権による自作自演との疑いすらあります。さすがに今回は自作劇ではないでしょうが、ウクライナ侵攻継続へ向け、国内を引き締める材料に使うでしょう」(同記者)