ナワリヌイ氏の急死に歯切れの悪い日本政府
ナワリヌイ氏は2000年代よりネット上でプーチンを鋭く批判する活動で注目を集めたブロガー・政治活動家で、2020年8月には秘密警察「連邦保安庁」(FSB)によって軍用毒物「ノビチョク」を使って毒殺されかけた。
仲間の尽力でドイツに移送されて手当を受けて九死に一生を得たが、回復するとプーチン政権への批判活動を続けることを宣言して翌2021年1月にはロシアに帰国。帰国と同時に空港で逮捕され、劣悪な環境の監獄を転々とした。その間、まだ40代ながら急速に体調を崩していった。ロシア当局による虐待疑惑が濃厚で、その結果、今月の急死である。
ロシア当局は死因について「散歩した直後に気分が悪いと訴え、直後に意識を失い、そのまま死亡した」と発表したが、ロシア当局の発表には信憑性は微塵もない。直接の死因は不明だが、プーチン政権によって心身を極度に痛めつけられ、死に至ったことは明白だ。
つまりプーチンによる「密殺」である。
著名な活動家の獄死に、各国の首脳はあいついで強い言葉でプーチンを非難した。
「激怒している。間違いなく死の責任はプーチンにある」(バイデン米大統領)
「ロシアでは自由な精神は死刑を宣告される。怒りと憤りを禁じ得ない」(マクロン仏大統領)
「ロシアはもう民主主義国家ではない」(ショルツ独首相)
「プーチンがいかに怪物であるか全世界が思い知らされた」(トルドー・カナダ首相)
「恐ろしいニュースだ。プーチン大統領個人に責任がある」(クリステション・スウェーデン首相)
「ロシア政権に全責任を負わせる」(ミシェルEU大統領)
それに比べると、日本政府の歯切れは悪い。
「確定的な情報は有しておらず、コメントは差し控える」(林芳正官房長官)
実際のところ、日本は西側主要国で最もロシアに対する批判を言わない国だ。特にプーチンを名指しで非難することは極端に避けている。そこは他の西側主要国とは雲泥の差だ。
これには理由がある。2022年2月のロシアのウクライナ侵攻まで、歴代の日本の政権がプーチンに好意的なスタンスをとり続けてきたからだ。