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グローバルサウスはむしろロシアに近い

池上彰(以下、池上) 「グローバルサウス」(南半球を中心とする新興・途上国)という言葉があります。

アメリカとロシアのどちらにも与しない、インドやインドネシア、中東などのグローバルサウスの国々は、今回のウクライナ戦争が終わった後、どのような存在に、あるいはどのような立ち位置になっていくとお考えでしょうか。

なぜ、ウクライナ戦争でロシアが勝者になる可能性があるのか「この争いは単なる軍事的な衝突ではなく、価値観の戦争でもあります」グローバルサウスの国々は“むしろロシアに近い”と言われるワケ_1
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エマニュエル・トッド(以下、ドット) この戦争が明らかにした問題の一つは、グローバルサウスと呼ばれる国々が、「どちらにも与しない」ではなくて、「むしろロシアに近い」ということが明らかになってきたことだと考えています。

いわゆる白人という人種を裏切った国、みたいな立ち位置にいまのロシアはいるわけですね。だからこそ、ヨーロッパからあれほどまでに憎まれることになったのだと思います。

ロシア人は、たとえばプーチンなんかを見ても、見た目はヨーロッパ人なわけですね。白人で金髪で青い目といった白人です。

それでも、基本的にいまは中国やインドやサウジアラビアと近く、その関係を保ちたいというふうに願っている。それが、いまの西側諸国からひじょうに憎まれる理由の一つになっていて、そしてそれは、この戦争が明らかにした点なのではないかと思います。

池上 ということは、この後、さらにグローバルサウスが発展していくということは、アメリカの没落につながっていくということなんでしょうか。

トッド これは別に私がその答えを持っているというわけではないんですけれども、確かに、まさにそれが今回のウクライナ戦争の真の問題です。

というのは、アメリカの没落の可能性、ということなんですね。これは、あり得るかどうかという回答を私は持っていないんですけれども、それこそがまさに、いま、真の問題としてそこにある、と考えているのです。

問題はウクライナでも、日本でも中国でもなく、まさに「アメリカが脱落するかどうか」というこの点なんですね。