中国の国産メーカーが存在感を発揮する時代に
中国もさえない。
資生堂の2019年12月期、中国の売上高は2162億円。2023年12月期は2479億円だ。コロナ前比で14.7%増と勢いがないのだ。
ジェトロによると、中国の化粧品市場は2023年が5169億元。2019年比で21.5%増加している。資生堂は市場拡大ペースに乗り切れていない。化粧品の最大手といえばフランスのロレアルだが、中国では肌質が似た日本の化粧品の支持が高かった。しかも、資生堂のような日本の大手メーカーは高品質で安全性が高く、清潔なイメージが醸成されていた。
2019年1月の資生堂の中国の店頭売上が前年同月比20%超で成長するなど、かつては勢いがあった。
資生堂はいまの中国のビジネスが不調な要因として、ALPS処理水の海洋放出後の日本製品買い控えを挙げている。この説明だと短期的な影響のように見えるが、様相はもっと複雑で深刻だ。法整備が進んで、中国国内のメーカーのシェアが拡大しているのである。
ジェトロによると、中国の化粧品関連の新規企業数は2018年が140万社、2020年は281万社、2021年には440万社となった。
2023年1-11月の中国化粧品輸入額は、日本が前年同期間比17.2%の減少。フランスは4.2%、イギリスは35.5%、アメリカは21.9%それぞれ減少している。中国政府は2021年1月に「化粧品監督管理条例」を施行。化粧品成分と製品、製造、広告、サプライチェーンなどに関する明確な要件を規定した。規定を設けて国産ブランドの標準化を図ったのだ。
しかも、中国側は外国メーカーに対し、原料の全成分を登録するよう求めているという。企業秘密が丸裸にされてしまうのだ。
資生堂に勝算があるとしたら
ただし、資生堂には勝算がある。富裕層に向けた付加価値の高い商品の強化だ。
中国の景気は冷え込みが顕著で、化粧品市場の拡大は緩やかになると予想される。その中で、安定的に利益創出ができる構造を構築しようとしているのだ。拡大路線から安定利益へと路線を大きく変更した。
中国国内の化粧品メーカーと過度な競争を行なうと、価格プロモーションに頼らざるを得なくなる。シェア拡大に目を奪われて、利益率が低下するのは日本のメーカーにありがちな罠だ。資生堂は経営改革を機に次なる成長ステージに移行しようとしている。
日本においても、ECの強化やドラッグストアの自由体験型モデルへの転換など、タッチポイントを増やす取り組みを行なっている。生まれ変わる資生堂からは成長が期待できるだろう。
取材・文/不破聡