2つの効果があるパワフルな薬


「ウゴービ」(一般名:セマグルチド)とは、いわゆる「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれる薬の一種だ。投与することで、体内で「インスリン」というホルモンの分泌を促す。

インスリンには第一に、血糖値を下げる働きがある。そのためGLP-1受動態作動薬は、もっとも多いタイプの糖尿病である「2型糖尿病」の治療薬として、血糖値が高い患者に対して、それを下げる目的で長らく使われてきた。

また、インスリンには食欲を抑える働きもある。そのためGLP-1受動態作動薬は、欧米では肥満症の治療薬としても使われている。食欲を抑えれば自然と体重が減り、肥満症も治療できる、というわけだ。

ウゴービは欧米を中心に利用者が急増しているが、日本でも2023年3月に新しい肥満症治療薬として薬事承認された(世界で9カ国目)。製造販売元のノボノルディスクファーマ株式会社は「肥満症の適応で承認された日本で初めてのGLP-1受容体作動薬」と謳う。しかし、その成分は同社が製造販売する2型糖尿病治療薬「オゼンピック」と同じである。

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2023年3月に日本で薬事承認された新しい肥満症治療薬「ウゴービ」(写真/shuterstock.com)
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誤解されがちなことだが、ウゴービは“気軽なダイエット”には使えない。

服用できるのは「高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る」とされ、「BMIが27以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する」か「BMIが35以上」の人のみ。つまり、「すでに食事と運動習慣の改善に取り組んでいて効果がない」うえ、「治療が必要になるほどの肥満の人のみ」が、この薬を使えるのだ。

ウゴービを取り巻く問題の本質は、ここにある。

噛み砕いて言えば、「糖尿病を治療できるほどパワフルな薬が肥満解消にも効果があるのに、一般的なダイエットには使えない」という構造だ。