若槻千夏、ファーストサマーウイカ、いとうあさこ
三者三様の個人トーク戦術

若槻千夏は『トークィーンズ』では後方で強いプレッシャーをかける役割である。近時の放送でも、おバカキャラのTravis Japanの面々が自作のポエムを甘噛みすると凄まじいスピードで「はいダメー」と一刀両断。後方位置からガッツリとゲストを削る役割が彼女には期待されている。

『上田と女』ではもう少しカバー範囲が広く、ときにはディフェンス、ときにはオフェンスと縦横無尽に顔を出す。「我慢できないモヤモヤ」を吐き出す回にもかかわらず、ゲストの愚痴が弱いと判断すれば、すぐに「こうされる方がもっと嫌ですよね」とトークを広げる。

かと思えば、大御所女優にありがちな「若さを保つ秘訣の質問に何もしてないと言いはるくだり」を「全カットでお願いします」とバッサリ。守りでも攻めでも存在感を見せる。

ファーストサマーウイカは『トークィーンズ』では関西弁と標準語をゲストにより使い分け、ときには悪者になることを厭わず献身的なトークを見せるが『上田と女』ではそれ以上にゲストへのカバーリングのよさが目立つ。ゲストへの「可愛い!」「すごーい」「まじで?」などのリアクションにおいては、誰よりも彼女の声が大きい。

上田もそんなウイカに全幅の信頼を寄せており、トークをもう少し広げたいなという場面では「ファッサマもそういうことある?」「ファッサマはどうなの?」など彼女に振ることが多い。

いとうあさこも双方の番組に出ているが役割は若干異なる。『トークィーンズ』では全体的に年齢層が若い中、お母さん的役割が求められがちであり、男性ゲストだけでなく女性陣にも「しょうがないわねえ」的な包容力トークが多い。一方『上田と女』では先輩の大久保佳代子がいることもあり、安心して突っ込んだエピソードトークをしている。

『上田と女が吠える夜』と『トークィーンズ』における、若槻千夏、ファーストサマーウイカ、いとうあさこのポリバレントな凄み…令和のトーク番組の出演者に求められるスキル_3
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「引き出しが多ければ需要がある」を物語る若槻千夏の復活

サッカーでチームごとに戦術があるように、集団トークも番組が変われば求められるものは変わってくる。そして、臨機応変に動ける優秀な芸能人はいろいろなところから声がかかる。

一度表舞台を去ったはずの若槻千夏はその能力の高さで何事もなかったかのようにカムバックして多くの番組に順応している。

数多あるトーク番組も、個々の出演者の技術や、番組の色に応じたフォーメーションなど、細部に注目していくとまた違った楽しみ方がある。

『トークィーンズ』と『上田と女が吠える夜』は、手練れの女性芸能人たちがのびのびと違った持ち味を出していておもしろい。両番組が表面上似ているからこそ、これからもおたがいを意識し切磋琢磨していくことを期待する。

文/前川ヤスタカ イラスト/Rica 編集協力/萩原圭太