トコジラミ発生でホテル側も大きな被害
都内の観光ホテルの関係者は「去年10月ごろ、お客さまから『トコジラミに刺されたかもしれない』という報告がありました。もちろんお客さまには宿泊料金もお返しし、診断書をいただければ診察料もお支払いすると対応しました。でも同時に(ネットの)クチコミで『泊まったら赤い発疹ができてかゆくなった』と書かれてしまいました」と話す。
このホテルは駆除費用に約20万円、駆除・清掃で約2週間部屋が使えなかったためにさらに20万円ほどの損失が出たという。「駆除依頼して発見できたので、こちらのお客さまのおかげで被害は増えなかったですが、クチコミに書かれてしまったことは当施設でも重く受け止めています。少なからず客足に影響が出ているかもしれません」(同ホテル関係者)
また、海外観光客の宿泊が多い都内のカプセルホテルは「去年の夏ごろもトコジラミの報告があったのですが、今年もすでに報告が上がっています。個人のスペースが狭い性質上、カバンをベッドに置く方や、私服のままベッドの上でくつろぐ人もいるので、なおさらトコジラミを持ち込まれたら繁殖しやすいのかもしれません」(カプセルホテル従業員)。
もっとも、前出の東京都ペストコントロール協会によると、昨年のインバウンドの規模はコロナ禍前までは回復していないのに、同協会に寄せられたトコジラミに関する相談は350件と過去最多を記録した。インバウンドとトコジラミによる被害件数の拡大は必ずしも比例していない。
「日本の一般住宅にトコジラミが入り込む危険性は、インバウンドよりもアウトバウンド、つまり、日本から海外に行きトコジラミを家まで持ち帰ってくるケースのほうが高いと思います。相談件数が増えたのは、近年トコジラミに関する報道が増えたため、それまでダニだと思っていたかゆみの原因が実はトコジラミだったとの認識が増えたこともあるでしょう。いずれにせよトコジラミは、日本の一般家庭にすでにかなり定着していると考えたほうがいいです」(同協会幹部)