「ベッドはトコジラミに譲って僕はソファ生活さ」

フランスの食品環境労働衛生安全庁の調べでは、2017年から2022年にかけて10世帯に1世帯以上がトコジラミの被害にあっており、公共機関は駆除作業に追われ、休校となる学校も続出する騒ぎだ。
パリ近郊の街、シュレンヌに暮らすマテオさん(42歳)は言う。

「半年前にベッドバグ(トコジラミ)を全部駆除してベッドも買い替えたのに、つい最近、またひざ裏と足の裏を刺されて赤い湿疹が出て目を疑ったね。
再び業者に頼んだものの彼らも大忙しだから、ベッドはバグに譲って僕はソファの上で寝袋にくるまって寝ているけど、腰は痛いわ体はかゆいわで連日睡眠不足さ。
こうしてる今もやつらはベッドで大繁殖中だし、本当に腹立たしいよ」

刺されると赤い湿疹とともに強烈なかゆみに襲われる
刺されると赤い湿疹とともに強烈なかゆみに襲われる
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パリを中心に、フランス全土へと広がっている「トコジラミ・パニック」。コロナ禍前からトコジラミの被害は囁かれていたが、今年に入ってからは新聞やニュースで連日のように注意喚起が行われている。しかし、この魔の手から逃れるには徹底した対策が必要だ。
いまだに被害にあっていないフランス北部のリールに住むマチルダさん(46歳)はこう話す。

「私たちの家族は電車のシートには座らない、タクシーに乗らない、映画館に行かない、そして空港に近づかないことを徹底してます。そのおかげか、うちにはまだ一匹も侵入させていない……はず。
そろそろ入国管理も含めた国の衛生意識を根本から考え直したほうがいいと思うわ」

2019年ごろからトコジラミの解決策を政府に訴えかけているマチルド・パノ議員は、10月3日に行われたフランス国民会議で「トコジラミが国民の睡眠を奪い、疲弊させている。これは国の公衆衛生問題だ」とボルヌ首相に訴えていた。