兄が厨房に戻る日まで
現場で少しずつ学び、2021年3月に『でぶちゃん』を卒業。残っていた兄のレシピをもとにラーメンを作り上げ、「独歩』は復活することになった。開店当初は正直、味の評価はよくなかったが、兄・優樹さんのことを知っていたファンたちや地域の人たちが応援してくれた。
「本当に応援してくださる方々が多かったので、見た目は順調に見えていたかなと思いますが、中身が伴っていませんでした。そこで、師匠である甲斐さんに味の相談をし、さらに地域のほかのラーメン店の人たちがいろいろと教えてくれたおかげで、自信を持って出せるものができるようになってきました」(井原さん)
オープンした頃、兄の優樹さんが試食をしてくれた。当時は納得していなかったようだが、今は「うまい」と言って食べてくれているそうだ。優樹さんはいまもリハビリ中で、現在は単語が少し話せる程度。優樹さんが厨房に立てるようになるまでは店を続けたいと英樹さんは話す。
そんな思いを背負っての、3月1日、火事による突然の閉店からちょうど2か月。『麺や 独歩』は復活を遂げた。
10時のオープンから、少しずつお客さんが集まり、昼時には行列ができた。休業中にワンタン好きの新入社員とともに研究をしたワンタンが看板メニューとして加わった。
「とりあえずホッとしました。常連さんが差し入れを持ってきてくれたり、手伝いに来てくれたり、本当にありがたかったです。初日からたくさんの人が会いに来てくれました。やっと日常に戻ったんだなと実感しています。
この2か月間、スタッフと地元の人たちの思いをとても強く感じることができました。しっかり地に足をつけて、地元の方が集まれる場所にしていきたいと強く思っています」(井原さん)
『独歩』の第3章は、これから始まる。優樹さんが厨房に立てるその日まで、英樹さんは踏ん張ってのれんをつないでいく。
取材・撮影・文/井手隊長
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