「無目的」の人々と「目的を持つ」人々のニーズを拾い上げる出店戦略
出店を続けるうちに、山田さんはカプセルトイが持つ体験価値に改めて気がついたという。
「ガシャポンは、気軽に楽しめるコンテンツだと再確認しました。目的のお店の隣にカプセルトイ専門店があると、そこにすっと入ることが多い。『ついで需要』が非常に多いんです」
こうした「無目的」の人を取り込むために、どのような出店戦略を立てているのか。
「今狙っている場所は、駅ナカや空港のような公共交通機関や、日常生活の動線になっている生活インフラに溶け込んだ場所です。例えば、バスの待ち時間で利用してもらえるバスターミナルも狙いたい。究極はコンビニや100均です。無目的で集まる側面が強いので、相性がいいと思います。
また積極的に業態変化をしているテナントに提案したいとも思っていて、例えばケータイショップはかつてたくさんありましたが、徐々にオーナーさんたちがそれを持て余すようになって、そこを他の業態に変えていく動きがあります。そういったところも狙いたい」
「ガシャポンバンダイオフィシャルショップ」ではさらに別の出店戦略も立てている。
「『ガシャポンバンダイオフィシャルショップ』は、そこに来ればバンダイの新商品があるので目的を持つお客さんが多い。今の目標は、全都道府県に最低1店舗は出店することです」
無目的の人々と目的を持つ人々の両方のニーズを拾い上げる。これが、出店戦略の本質だ。
カプセルトイの体験価値を推し出してく
山田さんは「カプセルトイの体験価値」についてこう語る。
「ガシャポンの商品は年々質が上がっています。最近では推し活文化とも連動して人気も上がってきた。でも、それだけがカプセルトイの魅力ではなく、たくさんのカプセルトイ自販機の中から選ぶ楽しみや、欲しい商品が出るか出ないかドキドキして回す体験も重要。
それはリアルでしか感じられない価値です。どうやったらこの場所でワクワクドキドキしてもらえるのか、それをこれからも意識していきたいです」
実際店内は、カプセルトイを撮影するためのブースがあったり、ポイントを貯めることができる空きカプセルの回収機があったりと、ワクワクしながら体験できる工夫に満ちている。
最後に、リアルな場での体験価値を高めるために、ファンミーティングの開催も行いたいと山田さん。
「現在はカプセルトイ専門店ブームと言われていますが、これがブームで終わらないように、その体験価値を推し出して、ファンの心をしっかりと掴みたいです」
取材・文/谷頭和希