「ついで買い」を狙った立地戦略

実際、バンダイナムコアミューズメントでは、さまざまなニーズを予測した上で慎重に出店を行うそうだ。

「その場所にどれぐらいの人がいて、その前をどれぐらいの人が通るのかを重視しています。『ガシャポンのデパート』はもともと、ゲームセンターと併設させる形でスタートしました。でも、カプセルトイのいいところはふらっと気軽に立ち寄って、ついつい買ってしまうこと。そんな『ついで買い』を起こしやすい場所も狙っています。ですから、日常的に人が集まる場所、例えば書店などにも出店しています」

「ガシャポンのデパート」のロゴ
「ガシャポンのデパート」のロゴ

一方、バンダイ商品のみで構成される「ガシャポンバンダイオフィシャルショップ」でも、別の形で「ついで買い」が起こる。

「『ガシャポンバンダイオフィシャルショップ』は、バンダイから発売されたガシャポンを全店に導入するというコンセプトなので、『あの商品が欲しい』という目的を持って来てもらえます。一方で、同じ空間に別の商品を併設することで狙いの商品以外にも目がいくわけです」

「一期一会」の出会いと、立地によって変わる商品

顧客ニーズを満たす工夫は、そのラインナップにもある。

「カプセルトイは毎月200〜300ぐらいの新商品が発売されるので、毎週ラインナップを入れ替えます。訪れるたびに商品が変わる『一期一会』性が、カプセルトイ専門店の価値になっているとも聞いています。お客さんにインタビューしたら、どの店舗に何が入ったのかを見周りする『店舗パトロール』という文化もあるらしいです(笑)」

店の立地によって、商品ラインナップを変えることもある。

「映画館に隣接している店舗は、映画関連の商品を集めるといった工夫もしています」

「ガシャポンバンダイオフィシャルショップ」のロゴ
「ガシャポンバンダイオフィシャルショップ」のロゴ

ニーズに合わせたラインナップを提供できるのは、全国各地にある店舗でのデータを活用することができるからだ。そのデータをもとに、商品ラインナップを決めていく。

「お客さんの好みの傾向がわかるということが、たくさん店舗を持つ当社の強みにもなっていると思います」

出店してみてわかることも多い

とはいえ、消費者の傾向は、出店前にはわからないことも多いという。トライアンドエラーでさまざまに出店した結果、見えてくることもある。

「意外な鉱脈だったのは、近くに大型ショッピングセンターなどの娯楽のスポットがあまりない場所です。こうした土地の店舗は、全国での平均的な売上よりもすごく高く、ときには都心部を超えることまであります。

例えば、地方の書店。書店自体も本だけでは商売にならないそうで、カフェを併設させたり、ネイルサロンを入れたり、いろんな業態をつくっています。書店の社長さんとお話すると、書店はそれぞれの地域で、なくてはならない公共インフラだった。そのため、本の売上は落ちているけど、そこにお客さんが集まる現象は起き続けている。時間をつぶす場所としての価値がいまだにある、とおっしゃっていました。

だからそこにカプセルトイ専門店が入ったことで、相乗効果で数字が伸びたんじゃないでしょうか」

「こうしたことは実際に出店してみないとわからなかった」と山田さんは振り返る。