台湾からの観光客数は3割増加
インバウンド消費は為替と切っても切れない関係にある。
ドル円は2019年に110円前後で推移していたが、2023年は130円台から始まってさらに円安が進行し、年の後半では150円をつけることもあった。1ドル140円だったとすると、2019年比でドルは1.3倍程度強くなったことになる。
2023年の旅行者1人当たりの支出額は、2019年比の3割増で21万円だった。ドルで換算した場合の消費額は、ほとんど変化していないことがわかる。インバウンドというフィルターを通して見た場合の円安効果は極めて大きい。
旅行者数も好調だ。2024年1月の海外観光客数は268万人で、2019年同月と同水準。前年同月比で8割も増加している。ポイントは、中国人観光客が41万5900人で、2019年比で44.9%も減少していること。30万人以上も少ないのだ。
中国は旧正月の休暇「春節」を迎える1月の下旬から2月上旬にかけて、旅行需要が集中する。しかし、中国政府は春節前後40日間の2024年の旅行者数を、前年割れと予測している。中国国内では、旅行の機運そのものが失われているようだ。コロナ禍からの景気回復の遅れが背景にあると見られている。
日本を訪れる中国人観光客の減少を補っているのが東南アジアだ。2024年1月の台湾からの旅行者数は2019年比で27.0%、シンガポールは50.4%、インドネシアは27.2%それぞれ増加している。
東南アジアといえば、食事代や宿泊費が安く、近場で渡航しやすいことから、日本人観光客にとって人気の旅行先だった。かつてインドネシアやフィリピン、タイなどの空港や観光地に赴くと、無許可のタクシー運転手に声をかけられたものだが、今や成田空港や銀座に白タクがうごめいているという。状況は完全に逆転している。