日本初の監獄ホテルを奈良にオープン

星野リゾートは、人気の「リゾナーレ」や「界」など、一部の物件ではRevPARが2019年の水準を超えていた。インバウンド消費などほとんど見込めなかった、2021年中盤にはもう回復していたのである。

このとき、星野リゾートは「マイクロツーリズム」を打ち出し、自宅から1時間程度の小旅行の集客に力を入れていた。2020年は人々に外出制限が課されており、消費者は非日常体験を求めていた。そこで星野リゾートは、大がかりになりすぎない、巧みな非日常を提案したのである。それが見事に成功した。

しかし、2022年に入ってもまったく回復しないブランドがあった。「OMO」だ。

「OMO」は「星のや」「リゾナーレ」「界」に続く第4のブランドで、2018年春に旭川で開業した。このブランドは都市型の観光ホテルだが、浅草店は宿泊者の半分を海外観光客で想定するなど、インバウンド需要の獲得を目的の一つとしている。

※星野リゾート・アセットマネジメント「決算説明資料」より
※星野リゾート・アセットマネジメント「決算説明資料」より

「OMO」のRevPARは、2022年6月から2019年の水準を上回るようになった。インバウンドの大波をつかんでいるのがわかる。星野リゾートは、2024年4月に「OMO5東京五反田」、2026年に「OMO7横浜」の出店を計画している。高知や函館のリニューアルも控えている。

2026年には日本初の監獄ホテル「星のや奈良監獄」を開業する。カナダに「Ottawa Jail Hostel」という監獄ホテルがあるが、外国人旅行者が多く宿泊することで知られている。星野リゾートは明言こそしていないが、「星のや奈良監獄」もインバウンド需要を想定しているだろう。

星のや奈良監獄 写真/星野リゾート
星のや奈良監獄 写真/星野リゾート
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今や日本経済は海外観光客がいなければ立ち行かない状態だ。消費活動が大きく変化する中で、時代に即した経営戦略が必要になる。星野リゾートは、巧みに消費動向を捉えている。

取材・文/不破聡