なぜ“内田洋”を見つけられなかったのか?
さらに各都道府県警と違い、公安警察は国の予算で動いているといった予算面からくる相違点もある。そうした警察内部での予算や保秘の観点からか、各都道府県警の所轄に配置された公安課は「最上階や外部からの出入りが少ない場所に配置されることが多い」(同前)という。
今回、連続企業爆破事件に携わったとされる桐島と見られる男をはじめ、時には国際テロ組織などとも対峙する公安警察――。監視対象団体や監視対象者の尾行などを日常的に行い、ときには監視対象団体の内部に協力者を作ることもあるという。
「2010年に国際テロの捜査対象者や捜査協力者600人以上の住所、電話番号などの個人情報がインターネット上に流出した『国際テロ捜査情報流出事件』で露呈したように、公安は徹底して捜査対象者の身分を調べた上で協力者を作り、有益な情報には協力費も支払います」(同前)
そして監視対象者を追い詰めるために、ときにはこんな手法を使うこともあるという。
「例えばある監視対象者が“いついつどこの店に現れる”といった確実な情報を入手したとします。その場合、対象者よりも先に捜査員が入店して他の席を埋め、撮影したり録音機を仕掛けることもあります」(同前)
ときにはドラマさながらの捜査手法で対象者に迫る公安警察だが、なぜ“内田洋”を見つけられなかったのか?
「あくまでも推測ですが、桐島と見られる男が49年間にも渡って逃亡生活を続けてこれたのは、指紋やDNAのデータが警察にも残っておらず、時を経て容貌も変化していたことが大きい。さらに、男は事件以前に交流があった周囲との連絡を完全に絶ち、痕跡を残さなかった。
例えば渋谷暴動事件の『中核派メンバー』として46年間指名手配をされ、2017年逮捕された大坂正明被告は、全国にあった『アジト』『非公然アジト』を転々としていたため、痕跡を追うことができた。大坂被告も組織と連絡を絶っていたのであれば偶発的な事故でも起こさない限り本人に辿り着くのは困難だったと思います」(社会部記者)
桐島と見られる男の49年ぶりの自白でクローズアップされた公安。その詳細は今後も明らかになることはないのかもしれない……。
取材・文/大島佑介 集英社オンラインニュース班
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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#2「イェ~イ、イェイ」とDJバーを盛り上げ、ギターも弾いていた…でも「自分は幸せにできるタイプじゃないから」と女性との交際は拒否、過去に神奈川県警と接触も?〈自称・桐島聡死亡〉
#3「“うーやん”と呼ばれ客にも慕われていた」自称・桐島聡は行きつけのバーのBBQ大会にも参加、ブルースやサンバを愛しライブイベントでは踊っていた!〈自称・桐島聡死亡〉