性愛におけるリベラル男性の欺瞞
──松本氏の報道と同時期に、東京都立大学教授で社会学者の宮台真司氏が、44歳年下で宮台ファンの女子大生と不倫していた報道もありました。二村さんは宮台氏と共著も出してますが、こちらの報道については、どう思われましたか。
松本さんのほうは女性からの告発が記事になっているけど、宮台さんのほうは「私は宮台真司にひどいことをされた」と女性が言っているわけではないので、メディアはくだらない報道をしているなあとは思いました。ただ両者の出来事の反響を比べると、むしろ宮台さんの事態のほうから根深い問題を連想しました。
──それはどういった点で?
松本さんたちがやったのではないかとされる行為を批判する人はたくさんいます。松本さんを擁護する人もたくさんいますが、その中には自分が過去に女性からひどいことをされたから、今回の事態に乗っかって女性全体を蔑視する暴言を吐くことで憂さ晴らししているように見うけられる人もいる。なにしろ、たくさんの人が意見を言います。
一方で、宮台さんの報道に関しては、リベラル男性の欺瞞についての議論がもっとなされるべき機会なのに、そうした議論が起こっていないように思います。
──どういった議論がありえるでしょうか。
先ほどから僕は「立場が弱い側の本心をちゃんと理解することが大切だ」と言ってきました。表面的に相手の同意が取れていればいいのかというと、必ずしもそういうわけではないです。悩んでいる女性の話を聞いてあげて、そのまま説得・洗脳してセックスに持ち込む。あるいは女性の恋心だけを食っておいて、女性側が望むような交際をせず曖昧なままの関係を続ける。
インテリでリベラルでモテる男性には、そういうことをしている人が多い。自称フェミニストのリベラル男性であるから許してしまいがちですが、根源にはミソジニー的な感情があって女性を侮辱してる点は「SEX上納システム」と同じです。ホモソーシャルなのか個人でやってるか、アンチ・フェミニストなのか自称フェミニストの底が浅いリベラルなのか、という違いがあるだけです。
──リベラル側にはリベラル特有の問題があるということですね。
外ではリベラルと称してる夫婦の家庭で妻だけが皿洗いをしてるとかよくあるし、不倫相手となっている女性のほうが本心では「結婚したい」と思っているのに「結婚制度が悪い」とか「社会が変なのだ」という理屈で言いくるめられていることもよくあります。
リベラル男性のことが好きなリベラル女性は、彼らに理屈を言われると「自分の考えが間違っているんだ」と反省してしまいがちです。恋させられてしまった側はバカになり、弱者になりますからね。モテない男や口下手な男はそれができないけど、小賢しい男の中には明らかにそれを利用してモテてる人や、都合が悪くなると女性との対話を避けて逃げる人がいます。リベラル男に泣かされた女性を僕は何人も見てきましたし、僕自身が女性の言葉を聞いているようでまったく聞けていない男です。