一番好きな映画は『トトロ』、その次は…

――『みどりいせき』は、あれだけ特殊な言語が頻出する一方で、風景や心情の描写はとても丁寧で、文字数も割いて、普遍的な純文学ならではの魅力が詰まっています。

風景に限らず、自分の場合は、フィルムメーカーになったつもりで、見たいシーンをいっぱい思い浮かべて、それを文字に写して、映像を編集する感覚で構成しています。視覚として、映像の感覚でさばく。しかも実際の映像だと、映ってる余計なものを消したりするのめっちゃ大変だし、気に入らない芝居を撮り直すのとか一人じゃできなかったりしますけど、文字なら一瞬でできる。そもそも映画は計算したものを撮っているので、必然の結果しか映らない。でも小説は、いくらでも作為を誤魔化せるし、ノイズも自由に削れるし増やせる。誰にも邪魔されず、思い通りに驚いてもらうには、小説は最高です。と言いつつ、これまで映画をたくさん観てきたから、今それができるんだと思いますけど。

――ちなみに、映画で好きな作品は?

一番は『となりのトロロ』で、次が『ブリグズビー・ベア』かな。

「マスメディアはゴミ、俺が片づけてやります」。“俺なりの夏目漱石『坊ちゃん』”を書いて、すばる文学賞を受賞した大田ステファニー歓人のパンチライン《後編》_3
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――ほかにも影響を受けた作品は?

アメリカンニューシネマ中心に。でもどんな作品が好きとか、誰に影響を受けたとか、恥ずかしいです。作品の中にリスペクトを込めてるので、そこから感じ取って、好きに楽しんでください。