着実に1に近づくジニ係数
昭和の百貨店もマス層である庶民が、非日常を楽しむ場所だった。屋上にはファミリーの集客装置である遊園地があり、上から下への動線を整えるシャワー効果によって各フロアに人が溢れていた。そこに集まる人びとは、少し背伸びをすれば購入できる品々を好んで手に取った。がんばれば何とか手が届くくらいの、絶妙なアイテムが当時の百貨店には並んでいたのだ。
しかし、百貨店の役割も変わりつつある。ターゲットを富裕層に定め、顧客の特徴に合わせた最適なものをセレクトして提案しているのだ。百貨店において、マスマーケティングは終焉を迎えつつある。
厚生労働省の「所得再分配調査報告書」によると、2021年の再配分前の「ジニ係数」は0.5700。2017年の0.5594と比較すると上昇している。ジニ係数は格差が大きいほど数値が高くなり、1になると全所得を1人が独占していることになる。コロナ禍を経て貧富の差は拡大しているのだ。
名門百貨店の業績の伸長にも、その特徴がよく表れている。
文/不破聡