1~2割の売上減に悩まされるマルイ
三越や高島屋、大丸、松坂屋の店舗別売上高を見てみよう。コロナ禍以前との比較だ。松坂屋名古屋店の2023年3-11月の売上高は、2019年同期間比5.5%増の904億円、大丸・心斎橋店は3.5%増、大丸・神戸店に至っては2割増の657億円だった。
松坂屋名古屋店は免税の売上高がコロナ禍と比較して3割も減少して20億円程度しかないが、店舗全体では増収となっている。大丸・心斎橋も免税は2割減だ。大丸神戸店の免税売上は、コロナ禍と比較すると2倍になった。しかし、金額は30億円にも満たない。それでも、神戸店は100億円もの増収に至っているのだ。
高島屋は主力である日本橋店の2023年3-11月の売上高が、2019年同期間比11.4%増の1066億円、新宿店が同19.1%増の631億円だった。1~2割増加している。
次にパルコとマルイを見てみよう。パルコの2023年3-11月全店テナントによる取扱高は2103億円。2019年同期間と比較して1割増加している。ただし、これは渋谷パルコの建て替えとリニューアルの影響が大きい。2019年の渋谷パルコの売上貢献は30億円ほどだったが、現在は250億円を超えている。
店舗別に見ると、パルコが苦戦する様子が見て取れる。稼ぎ頭の名古屋店2023年3-11月の売上高は224億円。2019年と比較すると1割少ない。池袋も7.8%減少している。
マルイは2023年4-9月のグループ総取扱高が過去最高の2.1兆円を超えるなど、会社全体の業績は堅調だ。しかしこれはクレジットカードの収益貢献が大きい。小売事業は上半期の売上高が前年を下回った。
店舗別に見ると、主力の北千住店の2023年4-9月の売上高が2019年同期間比13.6%減の172億円、新宿店が同17.0%減の119億円、有楽町店は2割減の71億円だった。
パルコやマルイは、かつてファッション感度の高い若者を引き付ける文化の発信地だった。ここで販売する衣料品に身を包めば、時代に乗り遅れることはないという安心感を与えていた。しかし、今やそうした意識は薄れた。代わりにユニクロやザラといった、ファストファッションがその役割を果たしている。
中間層とは、経済的な豊かさを実感できる人々のことだ。かつては、大量生産される衣料品を忌み嫌う風潮があり、パルコのような文化の拠点に熱狂した。それが中間層としての矜持だった。今の時代、それが失われているのだ。