底辺で身ぐるみを剥がされる社会構造

まず家庭環境が悪く、親との関係が疎遠だった場合、子どもは発達障害に加えて愛着障害になるリスクが高いことだ。親との愛着関係がうまくいかなかったために、大きな孤独にさいなまれ、ねじれた形で他者に愛情を傾けるようになる。

そんな人たちが陥りやすいのが依存症だ。男性ならゲームやギャンブルといった「行為依存」になりやすいが、女性は推し活やホストといった「対人依存」になる傾向にある。特に発達障害があると、1つのことにのめり込みやすいため、いったんそうなると理解しがたいほどエスカレートしてく可能性がある。

美月の場合がまさにそうだろう。発達障害に、家庭の問題や対人依存の問題が重なったことで、孤独から逃れる術が推し活になってしまった。そして声優の卵のA氏への投げ銭から、ホストへと移り、ひたすら搾取されることになったのである。

世間一般で言われるように、ホストの売掛けは非常に悪質なものだ。だが、仮に売掛けをなくしたとしても、美月の心の問題が解消されるわけではないのは誰の目にも明らかだろう。ホストクラブに行けなくなれば、再び投げ銭にもどるか、ゲーム、ギャンブル、薬物といった別の依存に陥るかだ。そしてホストたちも売掛けとはまた別の形で、そういう女性をターゲットにして搾取するだろう。

「紙でも食べろ」と言われて新聞紙を食べて気絶…ホストクラブに呑み込まれた発達障害の女性「推しに会えたってだけで何も考えらえないくらい興奮して。薬もたくさん飲んだ」_4
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こう考えていくと、社会的に弱い立場の人ほど、底辺で身ぐるみを剥がされる構造が見えてくるのではないだろうか。街頭での売春だの、売掛けだのと騒ぐのではなく、その奥にある構造に向き合っていくことのほうが大切なのだ。

取材・文/石井光太 写真/Shutterstock

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