事前に流出が当たり前? そもそも信頼できるのか
新聞・通信社の世論調査は基本的に、回答者が休日のケースが多い土日に行われる。各社は結果を月曜の朝刊に掲載するため、日曜昼過ぎには順次回答が出そろうスピード仕事となる。読者・視聴者が報道で知る前に、永田町には「速報」PDFやメモが出回る。
「各社は世論調査に数千万円単位をかけているため、ある意味『社外秘の流出』なのですが、知り合いから知り合いへメールなどであっという間に広まります」(全国紙政治部記者)
翌朝の報道まで社外に漏らさないというのが建前だが、記者は自社の結果を携え政党幹部を回り、「受け止め」と呼ばれる彼らの反応を載せた定型記事を書く。ただしこれは自らネタを作り出すマッチポンプの側面は否めないと批判を受けることも。それ以外にも他社と情報共有をすることで、次は他社の情報をもらえるバーター関係にもなっている。
国政選挙ともなると、各政党が自前で政党支持率や各選挙区や情勢調査も行う。その結果一覧表には各マスコミの調査結果がズラリと掲載され、社外秘情報が筒抜けである場合も少なくない。血眼になって他社や政党の情勢調査を集める記者もいるなか、意図的に数字を改ざんし、ばらまかれる「怪文書」も存在する。
かつて国政選挙中には、国会議員が報道前のある全国紙の情勢調査をツイートし、物議をかもした。その全国紙では報道前にデータを流出させるのは懲戒処分の対象になるとして政治部記者への調査が入ったという。とはいえ、ある記者は「幹部たちも同じことをやってきたのに、今さらばかばかしい」と嘆く。
結局、どこの世論調査が信頼できるのか。「選挙の情勢調査に定評のある朝日」だとか、「自民党調査は数字をいじっている疑いがある」などともいわれるが、前掲の世論調査表のとおり、回答率の低さが各社の悩みのようだ。回答数は1000人前後をメドとしているようだが、統計上、回答率の低さは回答者の偏りが疑われかねない。
なかには回答率を公表していないメディアもあるが、信頼性に疑問がつきかねないのではないか。さらにマスコミ不信を背景に「答えない」を含むその他回答が多くなっているのだとすると、なおさらその正当性は揺らいでくる。
X(旧Twitter)では政治に関するアンケートで回答者の多さだけを理由に正当性を誇る風潮もあるが、統計的調査からは程遠い。経験や知見を積み重ねてきた世論調査は、もっとわかりやすく調査の正当性を説明する時期にきているのかもしれない。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班