ポーカーゲームのようだった米中首脳会談

米サンフランシスコでバイデン大統領、習近平主席による1年ぶりとなる米中首脳会談が行われたのは11月15日のこと。

4時間を超す長丁場となったこの会談では、両国で中断している国防当局や軍高官による対話の一部再開が議論されたといわれるが、どちらかといえば、台湾周辺や東・南シナ海で威嚇行為を繰り返す中国に対し、アメリカ側が対話を望んだのではないか。

とはいえ、会談の席上では両首脳とも本音を口にせず、ポーカーゲームのように相手の持つ手札を探ったに違いない。特にバイデン大統領は、中国側の「ジョーカー」の存在がえらく気になったはずだ。

バイデン米大統領
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その「ジョーカー」とは中国のミサイル原潜である。11月1日にも米軍事サイト『ウォリアー・メイブン』が「中国海軍の新型である『096型』戦略弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)の建造が急ピッチで進められている」と報じたばかりだ。この報道が事実なら、中国軍にはNATOコードで「晋」094クラスと呼ばれるSSBN6隻に加え、新たに「唐」級と呼ばれる巨大な原潜2隻が加わることになる。

「唐」級「096型」は中国遼寧省で建造中とされている。米国防総省議会報告によれば、搭載ミサイルは現在の「晋」級の12発から24発に倍増するという。これはアメリカの持つミサイル原潜「オハイオ級」と並んで世界最多搭載数となる。

潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)は大陸間弾道ミサイル(ICBM)に次いで世界の核戦略の重要な要素となっており、本国が核で壊滅しても海中から核弾頭を相手国に打ち込む「報復ミサイル」としての役目を持つ。

こうした核による軍事バランスは米ロによる冷戦期以降、対話によってある程度コントロールされてきた。しかし、現在は中国の急激な軍拡によってそのバランスは「対話および制御が不能な状態」と言わざるをえない。