ゼレンスキー大統領が「反撃のカギを握る」と期待
ロシアがウクライナに侵攻してから1年が過ぎた。この間の戦況を振り返れば、首都キーウをめぐる攻防戦が繰り広げられた第1期、ロシアが激戦の末にアゾフ海に面するマリウポリを陥落させた第2期、ウクライナが機甲師団を用いてハルキウ、ヘルソンを奪還した第3期、そしてドネツク州のバフムートでロシア、ウクライナ両軍が一進一退の消耗戦を繰り広げる現在の第4期に分けられるだろう。
装備の乏しいウクライナは欧米の支援に支えられて何とか持ちこたえているものの、ロシア軍には人命を顧みない「兵力」と「時間」という優位性がある。
実際、ロシアは東部や南部戦線で構築した防御ラインを足掛かりに、真綿で首をしめつけるような包囲戦を展開し、ウクライナ軍を圧倒しつつある。ここでウクライナが大規模な反転攻勢に出なければ、このまま「敗北」という最悪のシナリオもありうる状況だ。
この危機的局面において、ウクライナのゼレンスキー大統領が「反撃のカギを握る」と期待をかけているのが、西側から供与予定のレオパルト2をはじめとする戦車による反攻である。
戦車専門誌「月刊PANZER(パンツァー)」の戸塚謹編集長が言う。
「現状はこれだけ戦線が長いために、ウクライナ、ロシア両軍ともまとまった数の戦車を投入できておらず、第一次世界大戦のように砲と塹壕を中心とした歩兵戦となっています。そこに戦車の圧倒的な火力が投入されれば、たとえそれが旧式のレオパルト1の105ミリ砲であっても、そのエリアの戦術的バランスを一気に崩すことになるはずです」