裏側にあるもうひとつのストーリーとは?
まず、モナ・リザはなぜ12年間も精神病院に入れられていたのか? 10歳のときに「出生証明書を持たない政治的亡命者」としてアメリカへやってきた彼女だが、何度も「里親制度の利用資格」を申請、その都度「不承認」とされてきたことがファイルに記されている以外、詳しい事情は描かれていない。
だが、少なくとも彼女を「劣悪な環境から救い出さなくてはならない」と考えてくれるような人が周りにいなかったことは確かだ。看護師は「アジア人だからろくに英語も理解できないだろう」とばかりに彼女を「Stupid!」呼ばわりし、平気で虐待をする。その背景には、「なぜ自分たちが払っている税金でアジア人を世話しなくてはならないのか」という白人としての不満があるのかもしれないと想像させる。
雑貨屋の店員もストリップ・バーの客の白人男性たちも、みなモナ・リザに対する視線は冷ややか。ボニーがモナ・リザに宿を提供するのも、親切心からではなく、彼女から搾取しようとしているからだ。
その証拠に、ハロルド巡査に追いつめられると「現金強奪はモナ・リザの仕業で自分は関係ない」と言い繕い、「こんな女のことは知りもしない」と逃げてしまう(ただし、ボニーを演じるケイト・ハドソン自身はリベラル派で、日系4世のボーイフレンドとの間に一児をもうけている)。
背景には、アメリカ社会におけるアジア人蔑視があることが画面の端々から感じられるし、アジア系移民のせいで仕事を奪われ、社会的にも経済的にも不当に低いポジションに置かれている、という白人たちの意識もまた透けて見えるのだ。