54年前に製作された第6作『女王陛下の007』

『女王陛下の007』(1969)は、ショーン・コネリーからボンド役を引き継ぎ、ジョージ・レーゼンビーが主演を務めた唯一の作品だ。初公開時、知名度のない俳優だったため日本では不発に終わってしまったものの、時の経過とともに評価が高まり続けている。

現在の007シリーズのプロデューサーのひとり、マイケル・G・ウィルソンは、かねて同作品のことを「シリーズ最高傑作」と公言している。初めてシリーズに本格参加した『007/ユア・アイズ・オンリー』(1981)では、いきなり『女王陛下の007』の続きから物語を始め、ファンを唸らせたほどだ。

2006年からスタートしたダニエル・クレイグ版の5作品は、初期シリーズのリブート版というニュアンスが強いが、とりわけ『007/スペクター』(2015)と『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021)の最後の2作品は、『女王陛下の007』をバージョンアップさせたトリビュート作品、もしくはある意味で“リメイク作品”とさえ呼べるものだった。

この2作品の原型が『女王陛下の007』であることを確認するのに、今回のリバイバル公開は絶好のチャンス。ここで、その類似点や物語のポイントを解説しよう。