ゾーンを引き寄せるのは目標の明確さ
WBCの決勝の対米国戦で、大谷選手に「ゾーン」が降りてきたことは間違いありません。ゾーンとは、「最高のパフォーマンスを発揮する最高の心理状態」を指します。
「ゾーン」は、スポーツ心理学におけるもっとも重要な研究テーマの一つです。もしもその選手が「ゾーン」に入ったら、以下のような兆候が表れることが、数多くのアスリートのアンケート結果により判明しています。
1.これから起こることが鮮明に予測できた
2.身体が無意識に動き、その結果は事前にイメージした通りになる
3.雲の上に乗ったようなフワフワとした感覚に襲われる
4.周囲の雑音をまったく感じることがなかった
5.時間の経過が驚くほど短く感じられた
この感覚はスポーツ選手だけが体験するわけではありません。さまざまな業種のトップ達にも「ゾーン」は訪れます。一流のパイロットは、凄まじい荒天においても、恐怖を感じることなく完璧なフライトを実現します。あるいは、一流の外科医なら、難度の高い手術であっても、手術前のイメージ通りにテキパキと作業を進めることができるのです。
ゾーンを引き寄せる要素は、「目標の明確さ」です。明確な目標を持って平常心と集中力を維持すれば、突然「ゾーン」は訪れるのです。さらにいえば、目標設定を上げて、やや難易度の高いことに挑んでいるときに「ゾーン」が訪れます。言い換えれば、自分が快感に感じる「コンフォート(快適)領域」では「ゾーン」は降りてこないのです。
図表2に、ゾーンを含む8領域を示します。横軸はスキルの度合であり、縦軸はチャレンジの度合を示します。高いレベルのスキルとチャレンジが噛み合ったときにゾーンは訪れるのです。その両端には「覚醒」と「コントロール」という好ましい心理状態が現れます。
そして、バランスが崩れた領域にチャレンジし過ぎる場合には「不安」と「心配」、チャレンジが不足し過ぎる場合には「くつろぎ」と「退屈」が現れるのです。
普段から「平常心」と「高い目標」という二つの要素を実現することにより、突然あなたにも大谷選手のような「ゾーン」が訪れるのです。