誰もがその素質を認める大器
9月20日、ロッテ戦――。6-2で迎えた9回のマウンドに立ったのは、クローザーの平野佳寿ではなく、山﨑颯一郎だった。1安打を許したものの、最後の打者・ブロッソーをフォークで空振り三振に仕留めて胴上げ投手に。優勝の瞬間、マウンド上で雄叫びをあげた。
昨季はシーズン途中に先発からリリーフに配置転換。自己最速の160キロをマークするなど、新たな仕事場で輝きを見せた。190センチの長身から投げ下ろす剛速球を武器に、今季は開幕からセットアッパーの座を確保。プロ7年目にして、初めてシーズン通して一軍の戦力になった。
チームのリリーフ陣を見渡せば、絶対的なクローザー・平野がいる。今季も途中離脱などはあったが、42試合に投げて29セーブ、防御率1.13と安定感はまだまだ健在だ。とはいえ、平野も今年で39歳。“常勝軍団”構築のために次世代のクローザー育成は急務だ。
その筆頭格が山﨑颯なのは、誰もが認めるところだろう。優勝を決める大事なマウンドを託されたこと、27ホールドとは別に今季9セーブを挙げていることからもそれは読み取れる。3月には追加招集ながらWBCにも出場。登板機会こそなかったが、“超一流”の空気感と“世界一”の瞬間を肌で感じた。
誰もがその素質を認める大器――。ただ、中学時代の指導者の“あるひと言”がなければ、山﨑颯自身もその才能には気付かなかったかもしれないという。
石川県出身の山﨑颯は、野球好きの祖父の影響で小学生時代に野球をはじめた。現在同様、背が高かったこともあって投手や捕手、一塁を守っていたという。ただ、本人の言葉を借りれば決して「飛び抜けて上手い」ワケではなく、投手をやっていたのも「背が高くて球が速かったから」だそうだ。